顕微授精(ICSI)妊娠での部分胞状奇胎

胞状奇胎は出生1,000件あたり2件程度とされていて、日本では年間2,000件程度とされています。その中でも部分胞状奇胎は通常2精子受精(大多数は3倍体)由来とされています。しかし、精子を一匹しか卵子内に注入しない顕微授精妊娠後の部分胞状奇胎妊娠が報告されています。ほとんどの原因は2倍体精子によるものと考えられています1)2)3)。
2倍体精子は健康男性では約0.2%、不妊症男性では1〜2%とされています4)。形態状の違いはほぼないようで、2倍体精子での受精時には3PNでは2PNになるため、なかなか顕微授精・受精確認の段階で判別することが難しいようです。

2013年の報告5)では、夫婦血液サンプルと流産絨毛組織から蛍光マイクロサテライトジェノタイピング検査を実施。ジェノタイピング検査により、流産絨毛組織は父親からの染色体が追加で持ち込まれた3倍体であることがわかりました。セントロメア近傍の遺伝子座を用いた解析により、2本の父型染色体は1つの精子に由来し、第2減数分裂の際に父親DNAが減数分裂エラーの結果発生した2倍体に由来することが報告されています。

1) Zaragoza MV, et al. Am J Hum Genet. 2000;66:1807–20.
2) Ulug U, et al. Reprod Biomed Online. 2004;9:442–6.
3) Dalmia R, et al. Fertil Steril. 2005;83:462–3.
4) Egozcue S, Blanco J, et al. Hum Reprod. 2002;17:5–7.
5) Philip Savage, et al.  J Assist Reprod Genet. 2013;30:761-4. 

文責:川井清考(院長)

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