高齢女性の体外受精結果の後悔予測因子(論文紹介)

体外受精を行なっても高齢女性では生児を得られる確率は極めて低くなります。
国内の2019年治療周期(採卵+胚移植)あたりの生児出生率は35歳 26.3% 、36歳25.2%、37歳 23.0%、38歳 20.0%、39歳 16.9%、40歳 13.4%、41歳 10.0%、42歳 7.0%、43歳 4.9%、44歳 2.9%と年齢と共に低くなっていくのがわかります。
高齢女性が体外受精を受けたことに対する後悔を調査した報告をご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

不成功に終わった女性のうち、40%が体外受精を受ける決断に後悔を抱いていました。情報/カウンセリングの適切さと感情的サポートが後悔を和らげてくれる因子となっていました。保険のサポートでの治療をうけられかどうかも後悔因子に影響を与える因子でした。

≪論文紹介≫

David Huang, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.02.014

2012年から2018年に大学病院生殖医療センターにて自己卵子を用いた体外受精を行い、アンケート調査に同意した42歳以上の女性94名(体外受精の結果に関係なく募集、治療中断から1年以上経過した症例を選択)を対象とし、意思決定後悔スコアを0-100で評価し、25以上を中度/重度後悔のカットオフとしました。
質問は患者背景(10問)、体外受精時のカウンセリングとサポートの認知度(9問)、体外受精をめぐる意思決定の後悔(5問)、体外受精治療の結果とその後の家族形成(6問)としています。
結果:
回答率は22%(回答者年齢中央値は43歳)でした。意思決定後悔スコアの中央値/平均値は10/17.1(0-75)でした。体外受精後、27%(n=25)の女性が中度/重度の後悔を感じていました。生児がいないことは後悔の増加と関連していました(OR: 22, 95%CI: 2.82-171.82)。不成功に終わった女性のうち、40%(n=24)が中度/重度の後悔を感じていました。このグループには、保険適用で治療が受けられるかどうかが予測因子に含まれていました(OR:0.33 , 95% CI: 0.12-0.99)。情報/カウンセリングの適切さ(OR: 0.44,95%CI: 0.2-0.77)および感情的サポートの適切さ(OR: 0.29, 95%CI: 0.15-0.55)は後悔と逆相関するサポート因子でした。

≪私見≫

どんなチャレンジでもそうですが、成功率が低いとわかっていても、自分は大丈夫と思ってトライするのは当たり前ですよね。私自身、医師になる選択は高校の先生からはお前は100%医者になれないと言われたところから時間をかけて達成した夢でしたので、なぜ成功率を客観的データで示したのに理解せず結果を受け止められないのか?という議論は違う気がします。
今回の報告では体外受精不成功の場合の後悔に影響を与える因子は大きく2つ。
1つめは、治療に対する保険サポートがあったかどうか、これは体外受精の保険適用の年齢内に治療を推奨してあげることが必要なのかなと思っています。
もう1つは、情報/カウンセリングの適切な介入です。こちらは私たちも定期的にお話しするようにしていますが、やはり見返せたりするように資材をもう一段階充実させて準備していくことで、治療サポートになっていくのでは?と考えています。

文責:川井清考(院長)

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