ビタミンD高用量摂取は体外受精成績が改善する?(論文紹介)

観察研究では、体外受精治療女性の血清ビタミンD欠乏・不足していると、生殖医療成績が悪くなることが報告されていますが、ビタミンD補充が生殖医療成績を向上させるかどうかは依然として不明です。
ビタミンDを高用量に摂取すると体外受精成績が改善するかどうかを検討したRCTをご紹介いたします。

≪ポイント≫

体外受精を受ける女性において、高用量のビタミンD3を事前に1回経口投与しても、臨床的な妊娠率は改善されませんでした。

≪論文紹介≫

Edgardo Somigliana, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021. DOI: 10.1016/j.ajog.2021.04.234

ビタミンD補充に対する生殖医療成績比較試験(the SUNDRO randomized controlled trial)は、2施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。2016年10月-2019年1月の間に募集されました。低ビタミンD(25OHビタミンD: 30ng/mL未満)、血清カルシウム: 10.6mg/dL以上、BMI: 18~25、AMH: 0.5ng/mL以上で、体外受精を行っている18~39歳の女性を対象としました。主要評価項目は1 周期あたりの累積臨床妊娠率としました。
主要解析はintention-to-treatに従って行われていますので自然妊娠も含まれる可能性があります。副次評価項目は、ゴナドトロピンの総量、生殖医療成績(回収卵子数、受精率、良好胚率、流産率、生児出生率)としました。
結果:
630人の女性が体外受精開始の2~12週間前に、ビタミンD3 600,000 IUの単回投与(n=308)またはプラセボ(n=322)のいずれかに無作為に振り分けられました。
介入群とプラセボ群でそれぞれ113人(37%)と130人(40%)の女性が臨床的妊娠を達成しました(P=.37)。ビタミンD3を投与された女性における臨床的妊娠のリスク比は0.91(95%信頼区間、0.75-1.11)でした。プラセボ群と比較して、ビタミン D3 摂取群の臨床的妊娠率は改善しませんでした。BMI、年齢、体外受精適応、卵巣予備能、ビタミン D3 摂取から体外受精周期開始までの間隔、25OHビタミンDの基礎値に関するサブグループ解析を行いましたが、補充の有効性を示す結果は得られませんでした。

≪私見≫

ビタミンD欠乏・不足群の生殖医療成績が悪くなるのは間違いなさそうですが、ビタミンD単体補充がよいのか、マルチビタミンなどでの補充がいいのかわからなくなってしまいます。最近ではビタミンDがとても低い人にはビタミンD単剤+マルチビタミン、ビタミンD軽度低値の女性にはマルチビタミンでよいのかなと思っていますが、このあたりも私見に過ぎないのでデータを収集し科患者様に情報発信していきたいと思います。

わかりやすいページをみつけました。とても参考になりそうです。
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』

文責:川井清考(院長)

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