痩せ女性は新鮮胚移植成績に影響する?(論文紹介)
痩せや肥満が体外受精・妊娠に影響することがわかっています。ただし、人種などにより差があると考えられていてアジアでのデータは重要と考えます。
凍結融解胚移植において、痩せ女性の生殖医療成績が低下するという報告を以前ご紹介いたしました(妊娠前の痩せ女性は生殖成績に影響する?(論文紹介))
新鮮胚移植における痩せ女性の生児出産率との関係を示した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
低BMIは、年齢が高めの女性において、新鮮胚移植の生児出産率が低下します。
≪論文紹介≫
Jiali Cai, et al. Fertil Steril. 2017. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2016.10.029
2013~2014年の期間に単一生殖医療施設での新鮮胚移植を行った4,798周期を対象に行なった後方視的研究です。低BMI群(18.5未満)はWHOに従って定義し、正常体重群(18.5-24.9)と生児出生率を比較しました。
結果:
体外受精で重要な変数を補正した場合、低BMI群は正常体重群と比較して、生児出生率の低下および流産率の上昇と関連していました。患者年齢は最も有力な交絡因子であり、比較した群間で生児出産のオッズ比(OR)を10.5%低下しました。相互作用(年齢×BMI)で検討すると、28-34歳女性に比べ、35歳以上女性において生児出産のオッズ比が低下しましたが、28歳未満女性と28-34歳女性においてのオッズ比には差がありませんでした。
卵巣刺激は75-225単位FSH製剤を用いてアゴニスト法、もしくはアンタゴニスト法で卵巣刺激を行い、5,000-10,000 IUのuhCGでトリガーを実施しています。新鮮胚移植は、3日目または5日目に行われ、移植胚数は1-3個としました。
≪私見≫
痩せは体外受精成績に影響を及ぼす可能性があります。痩せは、栄養不足だけではなく、慢性疾患が隠れていることもありますので注意だと臨床的観点からは考えています。
他の動物では、低エネルギー摂取がゴナドトロピン濃度、卵胞の成長および卵子の質に関連することが知られています。BMIだけだと筋肉量がわかりません。今後のポイントは痩せがなぜ生殖にとってマイナスに働くのかわかってくると成績改善につながるのだろうなと思っています 。
文責:川井清考(院長)
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