プレコンセプションケアでのアドバイスは効果あるの?(論文紹介)

子供が欲しい女性に生活習慣のアドバイスを妊娠前にしたら、行動変化が起こると思いますか?不妊女性がプレコンセプションケアを通してアドバイスを受け、生活習慣の改善につながるかどうかの効果と安全性を評価した報告です。

≪ポイント≫

質が低い論文が多いが、妊娠前の生活習慣に対するアドバイスは行動変容、そして変容に伴う生殖医療成績の改善にはつながっていなそうである。

≪論文紹介≫

Tessy Boedt, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021. DOI: 10.1002/14651858.CD008189.pub3.

2021年1月に複数の文献サイトから、不妊症患者に対する妊娠前に1種類以上の生活習慣の改善アドバイスを行った無作為化対照試験、無作為化クロスオーバー試験、クラスターランダム化試験を対象としました。
効果に対する主要評価項目は生児出産率と妊娠継続率とし、安全性に対する主要評価項目は周産期合併症と流産としました。副次評価項目は、生活習慣における行動変化の報告、出生体重、分娩年齢、臨床妊娠、妊娠までの期間、QOL、男性因子不妊としました。GRADE基準を用いて、エビデンスの全体的な質を評価しました。

結果:
2,130人7件のRCTをレビューに加えました。
①出生数:影響不明
(リスク比(RR)0.93、95%信頼区間(CI)0.79~1.10;1RCT、626人)

②流産や周産期合併症:報告なし

③妊娠前生活習慣の行動変化:影響不明
BMI(平均差(MD)-1. 06 kg/m2、95%CI -2.33~0.21;1 RCT、180人)
野菜摂取(MD 12.50 grams/日、95%CI -8.43~33.43;1 RCT、264人)
男性の禁酒(RR 1.08, 95% CI 0.74~1.58;1 RCT、210人)
男性の禁煙(RR 1.01, 95% CI 0.91~1.12;1 RCT、212人)
葉酸サプリメントの摂取(RR 0.98、95%CI 0.95~1.01;2 RCT、850人)
女性の禁酒(RR 1.07、95%CI 0.99~1.17;1 RCT、607人)
女性の禁煙(RR 1.01、95%CI 0.98~1.04;1 RCT、606人)

④体重に関する妊娠前の行動変化:影響不明
出生数(RR 0.94、95%CI 0.62~1.43;RCT 2件、707人)
妊娠糖尿病などの有害事象(RR 0.78, 95% CI 0.48 to 1.26; 1 RCT, 317人)
高血圧(RR 1.07、95%CI 0.66~1.75;1 RCT、317人)
流産(RR 1.50、95%CI 0.95~2.37;1 RCT、577人)
BMIわずかに減少(MD -1.30 kg/m2, 95% CI -1.58 t~ -1.02; 1 RCT、574人)

⑤アルコールに関する妊娠前の行動変化:影響不明
出生数(RR 1.15、95%CI 0.53~2.50;1RCT、37人)
流産数(RR 1.31、95%CI 0.21~8.34;1RCT、37人)

⑥喫煙に関する妊娠前の行動変化:影響不明
出生数、継続妊娠数、妊娠時有害事象、流産について報告なし。
喫煙に対する行動変容について報告しているが、レビュー方法の定義にはない。

≪私見≫

不妊カップルから、自分達がこんなに妊娠しないと思わなかったと話を伺うことがあります。妊娠のための生活習慣のアドバイスを中々プレコンセプションケアの段階からは受け入れることが難しいのではないでしょうか。ただ、頭の片隅にアドバイスが残っていることが、チリツモで効果を発揮してくるのではないかと思っています。

文責:川井清考(院長)

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