「冷え性」は婦人科疾患と関連する?_その2(論文紹介)

「冷え性」は婦人科疾患と関連する?_その1では「冷え性」の随伴症状にフォーカスをあてましたが、婦人科関連疾患が多くなかったですね。
他の論文も探してみました。「冷え性」 の正確なメカニズムはまだ不明ですが、婦人科疾患と関連はありそうですね。

≪ポイント≫

  • 「冷え性」があれば貧血、低血圧、慢性胃炎、逆流性食道炎、慢性鼻炎、月経困難症、胃十二指腸潰瘍の頻度が高いことがわかりました。
  • 「冷え性」は低体重と関連していました。腰痛や月経時の便秘と関連する傾向がみられました

≪論文紹介≫

①韓国からの慢性疾患と「冷え症」との関連
Kwang-Ho Bae, et al.BMC Complement Altern Med. 2018. DOI: 10.1186/s12906-018-2082-3.
「冷え性」に関する慢性疾患の頻度の関連を検討した報告をご紹介します。
2006年11月から2013年8月に韓国25医療機6149人の患者病歴、「冷え性」(あり:1909名、なし:3017名)、身体計測、血液検査調査データ、18疾患の頻度の差を検討した横断研究です。
「冷え性あり」群では、貧血、低血圧、慢性胃炎、逆流性食道炎、慢性鼻炎、月経困難症、胃十二指腸潰瘍の頻度が高いことがわかった。一方、頻度の低い疾患としては、高血圧症、糖尿病、空腹時血糖値異常、脂質異常症、脳卒中、脂肪肝、狭心症があげられました。年齢、性別、BMIを調整したロジスティック回帰では、「冷え性あり」群は「冷え性なし」群に比べ、糖尿病、脂質異常症でオッズ比が低く、変性関節炎、慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、慢性鼻炎でオッズ比が高くなることが報告されました。
結論 本研究は、CHHFが慢性疾患と関連していることを示した。これらの関連を検証するためには、さらなる大規模な前向き研究が必要です。

②日本人女子大学生の「冷え性」の特徴
Y. Matsuura,et al. Health. 2021 DOI: 10.4236/health.2021.135040

日本の女子大生278名を対象とし、「冷え性」および「月経関連症状(身体的・精神的症状)」を自記式質問票により評価、握力はハンドグリップストレングスダイナモメーターを用いて測定して比較しました。「冷え性」有病率は54.3%でした。冷え性は低体重指数と関連していた。また、冷え性は腰痛や月経時の便秘と関連する傾向がみられました。以上のことから,冷え性は,若い女性にとって,月経関連症状だけでなく,筋力にも関連する重要な症状であることがわかりました。

≪私見≫

いくつかの研究により、「冷え性」の自覚が月経前症状や月経前不快気分障害と関連していることが示されています(Yoshino, T. et al. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2013. Ikeda, T. et al.  Japanese Journal of Maternal Health. 2013. Kondo, M. et al. Health Sciences Bulletin Akita University. 2018)。
「冷え性」と「不妊」の関係は定かではありませんが、「冷え性」は自覚症状ですから、妊娠できない女性にとって原因なのかもと思ってしまうことは当然ですね。

患者様の「冷え性」随伴症状についても、傾聴できるよう最新知識をアップデートしていきたいと思います。

文責:川井清考(院長)

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