「冷え性」は婦人科疾患と関連する?_その1(論文紹介)

「私、冷え性なんです。これを治さないと妊娠しづらいですよね?」と外来で聞かれることがあります。私自身、冷え性ではないので気にはしていませんでしたが、あまりにも多くの患者様に尋ねられるので私なりに検討してみたいと思います。
色々文献を調べていくと、「冷え症」には,女性ホルモン分泌の不安定による神経・感覚器系に関連する異常と、末梢四肢の血行不良という循環器系に関連する異常が混在していることが考えられているようです。
西洋医学では冷え性に対しての医療サービスの必要性がまだ認識されていません。
日本女性を対象とした冷え性の有病率、他症状との関連を調査した論文をご紹介します。

≪ポイント≫

  • 「冷え性」は40歳前後女性で約85%が感じていました。
  • 「冷え性」女性は、血圧が低い、BMIが低い、精神的QOLが低い、睡眠の質が低い、飲酒の習慣がある傾向がみられました。肩こり、疲労、腰痛、頭痛、鼻づまり、かゆみ、聞き取りにくさなどの様々な随伴症状もみられました。
  • 「冷え性」は結合組織関連疾患、末梢神経障害、甲状腺機能低下症などの基礎疾患を除外した上で、生活習慣などを改善することが推奨されます。

≪論文紹介≫

Satoshi Tsuboi, et al. Int J Womens Health. 2019. DOI: 10.2147/IJWH.S190414.

日本女性における「冷え性」の疫学的評価を行うことを目的としました。
2016年2月から2017年4月まで横断研究を実施し、日本全国の女性238名のデータを分析しました。アンケートを用いて、参加者背景、健康関連行動、健康状態、過去1年間の「冷え性」の自覚頻度について調査しました。
「冷え症」の有病率は、重症(週に1回以上)、軽症(年に1回以上あり、週2回未満)、無症状(それ以外)と定義すると、軽度49.6%、重度35.3%でした。
医療サービス(鍼灸、マッサージ、柔道整復や通常のクリニック診察)利用率は、「冷え症」の重症度による有意差はありませんでした。末梢四肢の冷えと関連する随伴症状は、肩こり、疲労、腰痛、頭痛、鼻づまり、かゆみ、けが、聞き取りにくさでした。
多重ロジスティック回帰分析の結果、腰痛(OR:4.91)、聞き取りにくさ(OR:4.84)と関連が強くありました。精神的QOL、睡眠の質、習慣的飲酒などが「冷え症」と関連していました。

≪私見≫

この報告では女性ヘルスケアとの関連は示されていませんが、女性の多くの方が「冷え性」で悩んでいることがわかりました。婦人科疾患とも関連しそうな随伴症状が数多くありますので、患者様の訴えにもっと耳を傾けるべきだなと思える報告でした。

文責:川井清考(院長)

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