≪先進医療≫SEET法・二段階胚移植法の当院実績(2022年3月現在)

体外受精の保険適用に際して、形態良好胚を移植しているにも関わらず妊娠に至らない着床不全症例(胚移植反復不成功例)に対してSEET法・二段階胚移植法が先進医療Aとして採用されます。
亀田IVFクリニック幕張でもSEET法・二段階胚移植法の先進先進医療実施届出をして実施可能な体制を整備していきますので、当院の治療実績を踏まえてご説明いたします。
着床不全の原因の一つとして、受精卵から出る因子が着床に必要と考えられています。胚由来因子の欠如または減少によって起こる子宮内膜胚受容能の低下を改善する方法として、1999 年 に滋賀医科大学にて二段階胚移植が考案されました。
二段階胚移植法は胚を2個移植するため多胎の問題を回避することはできません。
単一胚移植で同様の効果を模索するために英ウィメンズクリニックで考案された方法が子宮内膜刺激胚移植法:Stimulation of Endometrium – Embryo Transfer(SEET)法です。 SEET液は体外受精の際に受精卵を5-6日間培養し胚盤胞になった培養液を一旦凍結保存し、胚盤胞移植の2-3日前に子宮内に注入する方法です。
二段階胚移植の一つ目の胚移植やSEET液の使用は胚由来因子が子宮内膜の implantation window に作用し胚受容能 を亢進している可能性があると考えられています。
これらの方法は、American Society for Reproductive Medicine (ASRM)や European Society of Human Reproduction and Embryology (ESHRE)のガイドラインには記載がありませんが、有用である可能性を期待され、今回は先進医療に選択されています。

当院では、現在の治療フローに積極的にSEET、二段階胚移植法を組み込んでおりませんでしたので、症例数はそこまで多くありません。
治療効果を比較するため、39歳以下の胚移植症例で検討してみました。
39歳以下のSEETなし単一胚盤胞移植症例1568例とSEETあり単一胚盤胞移植症例114例の比較では差がありませんが、2回胚移植反復不成功時での39歳以下のSEETなし単一胚盤胞移植症例257例とSEETあり単一胚盤胞移植症例54例での成績を見てみると改善が見込まれていそうです。

二段階胚移植法は2回胚移植反復不成功時での39歳以下の症例で単一胚移植257例と二個胚移植113例と二段階胚移植法23例の成績を比較しました。
症例が少なすぎて、比較は難しいですが、少なくとも成績改善が認めておらず、多胎率も50%(臨床妊娠を確認した6症例中3症例)と高くなっていました。(参考:二個胚移植は19.2%の多胎率です。)

保険適用の患者様に関しては亀田IVFクリニック幕張ではSEET法・二段階胚移植法ともに申請をだしますが、治療フローにSEET法を組み込んでいくことは検討いたします。

文責:川井清考(院長)

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