子宮動脈塞栓術(UAE)後の妊娠は危険?(論文紹介)

子宮動脈塞栓術は,子宮筋腫に対する有効な治療であり、また施行後の妊娠例も報告されているが、癒着胎盤や前置胎盤などの胎盤異常や異常出血の報告もあり、挙児希望を有する患者にUAEを推奨する結論はまだでていません。(婦人科ガイドライン2020)アメリカ、フランス、カナダの産婦人科に関連する学会でも、妊娠を希望する女性にUAEを推奨していません。
子宮筋腫摘出術の適応とならない妊娠可能な年齢の患者において、UAEの臨床的、解剖学的、および産科的な結果を評価した報告をご紹介いたします。

Olivier Serres-Cousine, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021.DOI: 10.1016/j.ajog.2021.05.033

≪論文紹介≫

2003年から2017年に有症状の子宮筋腫/腺筋症に対してUAEを実施した43歳以下の女性398名を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。
UAEは標準的な方法で行われ、子宮動脈から卵巣への血管吻合がある場合はマイクロコイルを用いて卵巣への血流を遮断し卵巣保護を行いました。UAE前後にMRIと超音波検査を行いました。
結果:
臨床症状改善率(月経過多、鉄欠乏性貧血、骨盤圧迫感など)は91.2%であり、重大な合併症はありませんでした。UAE 1年後には、筋腫の体積が平均73%減少していました。108名(49.3%)の女性が子宮動脈から卵巣血管への吻合があったため33名(14.5%)が卵巣保護のためマイクロコイル留置しました。妊娠時の平均年齢36.2歳で、UAE後の流産率(17.57%)でした。148妊娠、109出生(74人が正期産で、23人が早産。在胎週数35.12±2.78週)をみとめ、生児の平均出生体重と身長は正常範囲内でした。子宮構造の回復と卵巣保護が、妊娠転機がよい予測因子となりました。

≪私見≫

UAEは子宮腔内含めて良好な解剖学的構造に回復すれば妊孕性を高く維持できること、UAE後の胎盤異常、異常出血、流産率についても過去の報告ほど高い結果にならずUAE後の妊娠は試みても問題なさそうです。UAE後の150出生、妊孕性率50.7%、流産率12.6%と同様の安全性を示した報告も別途最近されています(Pisco JM, et al.  Radiology 2017)。卵巣予備能への影響はあるとした報告、ないとする報告様々ありますが、子宮動脈からの卵巣へのfeeding arteryがあれば症例であれば卵巣予備能の再評価はおこなうことが必要かもしれません。
子宮腺筋症へのUAEの有効性をこの論文では触れていることが印象的でした。
子宮腺筋症の場合、妊孕性温存手術は難しく、重度の子宮腺筋症患者には妊娠をあきらめてもらう可能性があるほど難治性不妊の原因となります。今回の報告では子宮腺筋症へのUAE後に一定数の妊娠率をおさめており、今後患者に示す治療オプションになり得るかなと感じました。

どちらにせよ、UAE後の妊娠に関しては質の高い研究が必要ですね。個人的には内膜への影響、妊娠までの期間などをもう少し詳しく知れたら患者様に情報提供しやすいなと思っています。

文責:川井清考(院長)

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