クロミフェン治療は多胎率が高い?(論文紹介)

クロミフェンクエン酸塩(クロミッド®️)は日本でも不妊症治療のために1968年から市販されている薬です。内因性エストロゲンの分泌がある程度保たれている第1度無月経、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が適応となり、第2度無月経ではほとんど無効とされています。以前より原因不明の不妊症の卵巣刺激剤としてクロミフェン治療を使うかどうかは議論が分かれています。
安価な薬ですし、比較的合併症も少ないため実臨床でも多用する薬ですが、一番の問題点は多胎の発生率です。ビッグデータをリンケージして評価した論文をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Vivienne Moore, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.08.030

データリンケージにより構築されたコホート研究で、調剤薬剤に関するオーストラリア政府の包括的な記録と妊娠20週以降の出生に関する南オーストラリア州の周産期登録の記録とをリンクしました。
対象は2003年7月から2015年12月の間に妊娠20週以降に出産した女性150,713人241,561分娩を対象としました。
結果:
97.9%の女性について、調剤された処方箋の記録との関連付けをすることができました。クロミフェン治療で妊娠した女性は、高齢で社会経済的に恵まれている傾向があり、他の女性よりも流産既往が多い傾向がありました。クロミフェン治療に関連した妊娠は全体の1.6%(20週以降に妊娠している女性の60人に1人)でした。クロミフェン治療で妊娠した女性の多胎妊娠は5.7%(双胎:94.6%)であり、その他の女性の多胎妊娠は1.5%(双胎:98.5%)でした。

≪私見≫

クロミフェン治療を行う際には、やはり超音波でモニターしながら管理することにより発育した卵胞数を把握することができ、複数育った場合は夫婦生活を避けてもらうことで多胎の発生率をさけることが可能だと思います。適切な使用法が求められます。
他にも下記のような副作用がありますが、特徴的な「目のかすみ」は患者様に伝えておく必要があると思います。

  5%以上もしくは
頻度不明
0.1-5% 0.1%未満
卵巣過剰刺激 下腹部痛などの卵巣腫大症状    
虚血性視神経症 霧視などの視覚症状  
過敏症 発疹など    
精神神経系 精神変調 頭痛、情動不安  
肝臓 肝機能異常   5%以上のBSP排泄遅延
消化器   悪心・嘔吐 食欲不振  
その他   顔面潮紅、尿量増加、口渇、疲労感  

文責:川井清考(院長)

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