hCG/オビドレル使用時の低い妊娠反応陽性は本当の着床?(当院データ)
タイミング・人工授精を行う際に、排卵誘発・黄体賦活化目的にhCG/オビドレル®️を投与することがあります。これらは一般的な治療ですが、hCG製剤ですので使用して数日の段階で妊娠検査薬を試すと注射の影響で妊娠検査薬は陽性反応が出ます。
では、どのように解釈したらよいか?なかなか論文などにはならない内容なので私たちのクリニックとしての見解を記載させていただきます。
①hCG/オビドレル®️を投与から36時間後には血中の値はかなり下がる。
当院2施設でデータをとり日本産婦人科学会2019で報告しています。
2018年6月ー2018年9月までに卵巣刺激の誘発目的でrhCG製剤(オビドレル®️) 、urinary-hCG(uhCG)製剤を使用した157症例183周期(rhCG250ug:111周期 、uhCG5000IU:45周期、uhCG10000IU:27周期)の採卵当日(トリガー後34-37時間)の血清hCG濃度,卵胞液hCG濃度を後方視的に検討したところ、 rhCG250ug、uhCG5000IU、uhCG10000IUの採卵時の血清hCG濃度は149.7±45.8IU/L、167.9±62.3IU/L、295.2±136.8IU/Lでした。
尿中妊娠検査薬は大体25IU/Lがカットオフでくっきり陽性になりますから、注射の後2日では陽性ですね。hCGの半減期は約24時間と言われていますので、uhCG 5000単位を使用した場合7日経つと単純計算では注射による血清hCG濃度は10IU/L未満になります。
②排卵周期凍結融解胚移植からの解析
当院では胚盤胞凍結融解胚移植の妊娠判定を血清hCG濃度 5IU/Lと判断し解析を行っています。ホルモン補充周期と一部の排卵周期凍結融解胚移植ではhCG/オビドレル®️を使用しませんが、排卵周期凍結融解胚移植の大半は排卵日を固定し凍結融解胚移植の日程をフィックスさせるためにhCG/オビドレル®️を使用します。
判定は廃盤胚移植の場合は移植日を2w5dと算定し、7日後(3w5d)に判断しています。その場合、注射をいつ打ったかによって妊娠判定日に血清hCG濃度がどの程度残っていたか見てみました。hCG/オビドレル®️をうっていても陰性化している症例もありますが、一部の症例では残っています。
やはり血清hCG濃度 3IU/L前後までは注射の影響で着床していなくても数値がでている可能性があります。もちろん、微量の数値がでている場合は患者様と相談し治療を数日継続して再判定するか中断するかは検討します。
医療者側としては本当の着床かどうかは今後の治療方針に大事な判断材料になりますので再判定をお勧めすることが多いです。
これらのことから私たちは以下のように考えています。
①hCG/オビドレル®️を打った場合のタイミング・人工授精治療は注射を打った12日より前に自宅妊娠判定の場合は、注射に含まれている血清hCG濃度の反応を見ているだけのぬか喜びになってしまう可能性があるので実施しないこと。
②hCG/オビドレル®️を使用した排卵周期凍結融解胚移植(3w5d-3w6d)の妊娠判定で血清hCG濃度 3IU/L前後は、注射の影響か本当の着床かの区別が難しいので主治医としっかり相談し判断すること。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。