妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

妊娠できるカップルの約85〜90%は1年以内、そのうちほとんどは6ヵ月以内に妊娠するとされていますが、妊娠しないカップルからすると非現実的な数値に見えるかもしれません。妊娠しない治療に固執して妊娠しない期間が延びると夫婦年齢はどんどん重ねていくわけなので、一定の時期に不妊検査をうけ、ステップアップすることが好ましいと思います。では根拠となる論文はどのような論文なのでしょうか。ご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

①平均24歳女性で過去に妊娠を検討した期間が少なくとも1年ない新婚カップルの妊娠する力をみた中国の論文

Wang X, et al. Fertil Steril. 2003. DOI: 10.1016/s0015-0282(02)04694-0

中国の前向き観察研究。対象者は妊娠を希望する健康な新婚女性518名。
避妊を解除した後、1年間もしくは臨床妊娠が成立するまで、毎日の性器出血と早朝尿を確認しています。評価項目として着床、生化学妊娠、臨床的妊娠までの期間としています。
結果:
最初の12ヵ月間における1周期あたりの着床率は40%でした。618件の妊娠のうち、49件(7.9%)が自然流産、152件(24.6%:着床した人の中での割合)が生化学妊娠でした。生化学妊娠は、臨床妊娠が認められなかった全周期の14%でしたが、これにより臨床妊娠までの期間が遅れることはほぼありませんでした。前周期の生化学妊娠は,着床(OR,2.6;95%CI,1.8~3.9),臨床的妊娠(OR,2.0;95%CI,1.3~3.0),生化学妊娠(OR,2.4;95%CI,1.4~4.2)の確率の上昇と関連しましたが、流産・低出生体重児・早産とは関連していませんでした。
結論:
臨床妊娠に到達しない周期でも、生化学妊娠はかなりの割合で存在し生化学妊娠できる人は妊娠する力がある人であることがわかります。

②平均女性年齢29.0±3.6歳、平均男性年齢(n = 333)31.6 ±5.5歳の避妊解除後のカップルの妊娠率を検討したドイツの論文

Gnoth C, et al. Hum Reprod. 2003. DOI: 10.1093/humrep/deg366

女性346名を対象とし、自然妊娠の割合を検討しました。合計310名が妊娠し、残りの36名(10.4%)は妊娠しませんでした。全女性(n = 340人)の1、3、6、12周期目の推定妊娠率は、それぞれ38、68、81、92%でした。妊娠した女性(n=304人)を分母で考えると1、3、6、12周期目の推定妊娠率はそれぞれ42%、75%、88%、98%でした。Wilcoxon検定では妊娠までの期間に対する女性年齢の影響は、全体のグループよりも妊娠できる女性の方が少なくなりました。
結論:
ほとんどのカップルは、6周期以内に妊娠します。その後は2組に1組の女性は不妊症です。

≪私見≫

「妊娠できるカップルの約85〜90%が1年以内、ほとんどが6ヵ月以内に妊娠する。」の根拠はやはり若い女性の研究でした。学ぶことが多々あります。
・生化学妊娠できる人は妊娠しやすい。
・妊娠できる人は妊娠できない人に比べて年齢の影響をうけづらい。
・6-12ヶ月妊娠しなければ不妊検査をすることを検討するべき。
この3つは大きな学びとしてあります。
当院での初診来院前の不妊期間で、その後どの程度タイミング妊娠したか出してみました。やはり不妊期間が長いほどクリニックにかかってからもタイミングも妊娠率が上がらないことがわかります。当然といえば当然ですが、不妊スクリーニングを実施しステップアップすることが必要だと思います。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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