胚移植するときの培養液容量は?(論文紹介)

胚移植の際の内膜調整は重要なステップですが、意外と使用しているカテーテルの種類、胚移植に使用する培養液の組成や量については未解決の項目が多々あります。胚移植に使用する培養液の量も、体外受精成績に影響すると考えられている項目の一つです。培養液量に対して報告した前向き研究がありましたのでご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

George Α Sigalos, et al. J Assist Reprod Genet. 2018. DOI: 10.1007/s10815-017-1099-8
新鮮胚移植において,胚移植に使用する培養液量が少ない場合(20~25µl)と多い場合(40~45µl)で成績に差があるかどうか236名の女性を無作為に割り振り臨床妊娠率、着床率、継続妊娠率を2群間で比較しています。
結果:
低容量群と高容量群では、臨床妊娠率(46.8 vs. 54.3%、p=0.27)、着床率(23.7 vs. 27.8%、p=0.30)、継続妊娠率(33.3 vs. 40.0%、p=0.31)に、それぞれ差は認められませんでした。
結論:
胚移植の培養液量は至適範囲であれば新鮮胚移植の成績に影響しないことがわかりました。

≪私見≫

Montagらのレトロスペクティブ研究では胚移植時の量が多いと妊娠率が高まると1999年に報告していますが最近の報告では差がなかったようです。
培養液量が多いと培養士のローディングの手技も医師の胚移植の主義も比較的簡単になり、成績が安定します。また、液量が少なく医師の手技が安定していないと子宮収縮を誘発し異所性妊娠のリスクを上げ兼ねません。反対に液量が多いと胚が移植した部位に着床せず異所性妊娠を上げる可能性も否定できません。
当院では異所性妊娠のリスクを少しでも下げる、成績を安定させるという観点から現在は2013年から様々な液量・培養液を検討しlow volumeでの胚移植を行っております。医師の成長曲線がゆっくりかもしれませんが、成績は安定しており子宮外妊娠も0.39%(6/1534)となっています。反面、子宮外妊娠が6名いるのは実情ですし、high volumeでの胚移植が好ましいのではないかと思う症例もあり成績に応じて変更指示をしておりますが、科学的根拠は乏しい部分です。今後も胚移植時の培養液に関しては最新の論文と自施設の成績を比較検討しながら患者様に良い胚移植を提供していきたいと思います。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張