流産用語について(Lancet 総説2021:series1)
今回、報告者らは世界のデータをまとめ、より流産患者に正しい情報を提供するために用語も統一していくことを提案しています。
日本の流産用語とはやや異なる部分もありますが、論文を読む時や海外の流産記事を調べる時などに参考にしてもらえたら幸いです。
Siobhan Quenby et al. Lancet. 2021. DOI: 10.1016/S0140-6736(21)00682-6
妊娠初期の流産について
- Pregnancy loss
妊娠の喪失(臨床妊娠の有無問わず) - Early pregnancy loss
妊娠10週前の流産 - Biochemical pregnancy loss
妊娠検査薬が陽性であったにもかかわらず、超音波の評価前に陰性になってしまう流産 - Preclinical pregnancy loss
超音波検査で妊娠が確認される前の流産 - Clinical pregnancy loss
超音波検査で妊娠が確認された後の流産 - Pregnancy of unknown location (PUL)
妊娠検査薬が陽性で超音波で子宮内外に妊娠が確認できない場合の一時的な分類 - Resolved pregnancy loss of unknown location (resolved PUL)
PUL後、2週間後に妊娠検査薬が陰性となった状態 - Persistent pregnancy of unknown location
PUL後、48時間間隔で血清hCG濃度がプラトーだが、超音波検査で妊娠部位が不明である場合 - Intrauterine pregnancy of unknown viability
胎児の生存が確認される前の早期の臨床妊娠の状態、つまり妊娠継続が可能である子宮内妊娠
GS 25mm未満で、卵黄嚢や胎芽がみえない子宮内妊娠
GS 25mm未満で、卵黄嚢が見え、胎芽が見えない子宮内妊娠
CRL 7mm未満で、心拍が見えない胎芽を有する子宮内妊娠 - Viable intrauterine pregnancy
子宮内に胎嚢がみえ心拍がみえた妊娠 - Miscarriage
超音波や組織検査によって確認された子宮内妊娠の流産 - Missed miscarriage
GS 25mm以上で心拍がみえない場合
CRL 7mm以上で心拍がみえない場合 - Incomplete miscarriage
流産の際に、胎芽あるいは胎児、付属物が完全に排出されず、一部が子宮内に残存し子宮が十分に収縮せず、子宮口も閉鎖しないで、出血などが継続している状態を不全流産という
≪私見≫
用語集では流産はabortionと記載されていますが、最近ではmiscarriageと表記されることが増えてきます。流産の分類も国内では1993年に早期流産(early abortion)を妊娠12週未満の流産、後期流産(late abortion)を妊娠12週以降22週未満の流産と定義していますが、不育症などの抽出の際に妊娠10週以降の流産をリスク因子として抽出することが増えてきています。
国内の過去のデータとの整合性、世界のデータとの比較検討の観点から定義を変更していくのにはもう少し時間がかかるのではないでしょうか。私個人としては患者様に医療を提供する医療者が理解して説明できれば一旦は問題にならないと考えています。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。