非閉塞性無精子症における精巣内精子選別方法(論文紹介)
今回は非閉塞性無精子症における精巣内精子の選別方法をまとめた総説を紹介します。
Aydos K, Aydos OS. Sperm Selection Procedures for Optimizing the Outcome of ICSI in Patients with NOA. Journal of Clinical Medicine. 2021; 10(12):2687. https://doi.org/10.3390/jcm10122687
非閉塞性無精子症、精巣内精子とは?
体外受精で使用する精子は、主に、射出した精液中に居る精子を使用します。一部の患者さんは射出した精液中に精子が居ない場合(無精子症)があります。
精子は睾丸の中で作られ、精子が運ばれる道(精路)を通って、男性が絶頂感を感じる時に分泌液と精子が一緒になった「精液」として外に射出されます。
精液中に精子が居ない原因は大まかに二つあります。一つ目は睾丸で十分な数の精子は作られているものの、精路が塞がっていて精子が外に出られない、二つ目は睾丸で作られている精子の数が少なくて、精路を通る間に居なくなってしまう、の2パターンになります。
いずれにせよ、精液中に精子が居ないことになりますので、受精させることは出来ません。何らかの理由で精子が外に出て来られないのであれば、精子が作られている所から直接精子を回収しよう、これが精巣内精子回収術と呼ばれる技術になります。
精巣内精子回収術、具体的には睾丸の中、精子が作られている精細管と呼ばれる細い管を外科手術下に取り出して、この精細管をバラバラにして中に居る精子(精巣内精子)を丹念に探して体外受精(顕微授精)に用います。
一般的に精路が塞がっていることが原因の閉塞性無精子症の場合、睾丸の中で十分に精子が作られていることが多いので、精子の回収は比較的容易です。精路が塞がっていないにも関わらず精子が居ない非閉塞性無精子症の場合、睾丸の中で十分な数の精子が作られていないことが多いので、精子の回収は比較的困難になります。
前置きが少し長くなりましたが、今回紹介する総説は精子の回収が比較的困難な非閉塞性無精子症における睾丸の中の精細管から回収した貴重な精巣内精子の選別方法について詳しく述べられています。極一部だけ例を挙げますと、当院で既に行っている、精子選別倍率を上げて精子を見る、ヒアルロン酸の性質を利用した成熟精子の選別方法等について効果の有無が報告されています。実に273報の論文の情報が簡潔にまとめられているので、培養士として大変勉強になりました。
現在、当院では毎月1-3件の精巣内精子回収術が行われています。この総説を基に、当院の技術を見直して患者さんにより良い技術を提供出来ます様、絶えず改善を続けてゆきたいと思います。大変な作業ですが、大変遣り甲斐があります。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。