セレニウムサプリメントが精液所見を改善して、尚且つ、精子DNA断片化を防ぐ!?(論文紹介)

今回はセレニウムサプリメントが精液所見を改善し、精子DNA断片化率を下げる可能性があることを示した論文を紹介します。

Cannarella, Rossella, Rosita A. Condorelli, Aldo E. Calogero, Vincenzo Bagnara, Antonio Aversa, Emanuela A. Greco, Antonio Brunetti, and Sandro La Vignera. 2021. "Effects of Selenium Supplementation on Sperm Parameters and DNA-Fragmentation Rate in Patients with Chronic Autoimmune Thyroiditis" Journal of Clinical Medicine 10, no. 16: 3755.

セレニウムとは?
「セレニウムとは、体を健康に保つために必要な栄養素です。セレニウムは生殖、甲状腺機能、DNA生成に重要であり、また、フリーラジカルが原因の損傷や感染から体を守るためにも重要です。」
(厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』サイトから)

過去のブログ記事で精子DNAの断片化が体外受精の成績に悪影響を及ぼすこと、その検査方法について紹介しました。したがって、精子DNAの断片化率は低ければ低い程良いです。

今回の論文では自己免疫性甲状腺炎のある患者さん20名を対象にセレニウムサプリメント83μgを1日1回、半年間服用してもらい、服用前と服用後の精液所見と精子DNA断片化率を比較しました。その結果、精子濃度、精子運動率、正常形態精子の割合は服用前に比べて、服用後が有意に上昇し、逆に、精子DNA断片化率は服用前に比べて服用後が有意に減少しました。以上のことからセレニウムサプリメントの服用が精液所見改善と精子DNA断片化抑制に有用である可能性が示されました。

以前の報告ではセレニウムサプリメントの服用は効果がないとするものもありましたが、他の薬剤と併せて使用されていたこと等の背景の違いがありました。今回の論文では、セレニウムサプリメントのみの服用に限定して検証したことで新規性があります。

しかしながら、この論文で対象となっているのは自己免疫性甲状腺炎のある患者さんなので、持病の無い方達を対象とした際、同様の効果が得られるのかは不明で、今後、更なる検証が必要です。引き続き、セレニウムサプリメントに関する報告に注目したいと思います。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張