PCOSの妊娠継続を阻害する要因は?(論文紹介)

PCOS患者の妊娠継続を阻害する因子として、受精卵の染色体異常が現在のところ増えていなさそうですから、それ以外の要素因子と考えると受精卵の染色体以外の問題(細胞質など)か子宮内膜かを含めて母体側の着床因子が原因として考えられます。PCOS女性と流産リスクのシステマティックレビューをご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Yi-Fei Sun, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2020. DOI: 10.3389/fendo.2020.592495

Embase、PubMed、Web of Science、Cochrane Libraryに掲載されているPCOS(ロッテルダム基準で診断)と自然流産に関して発表された全ての研究について、システマティックレビューとメタ分析を行いました。リスク因子には、BMI、女性年齢、HOMA-IR(インスリン抵抗性)、高アンドロゲン血症、染色体異常などを検証し主要評価項目は流産率と生児出生率としました。
結果:
1,836件の論文のうち22件が適格と判断し11,182人の患者を対象にしました。
BMI高値(OR = 1.48, 95% CI [1.32, 1.67]、MD = 1.35, 95% CI [0.58,2.12])およびHOMA-IR高値(MD = 0.32, 95% CI [0.15, 0.49])は、体外受精を実施しているPCOS女性の流産のリスク増加と関連していました。胚の染色体異常(OR = 0.75, 95%CI [0.31,1.77])、高アンドロゲン血症(MD = 0.10, 95% CI [- 0.02, 0.22])は、PCOS患者の自然流産率の高さとは関連していなかった。BMIのサブグループ解析では、体外受精を実施しているPCOS女性の過体重と肥満との違いは流産に影響を与えませんでした。(OR = 1.34, 95% [0.97, 1.85])。
結論:
BMI高値とHOMA-IR高値は、体外受精を実施するPCOS女性の流産のリスクを高める2つのリスク因子であり、体重を減らしてインスリン抵抗性を緩和することで、流産率を低下させる可能性が示唆されます。

≪私見≫

このシステマティックレビューの面白いところは二つです。
基本、太っていたら痩せましょう、そして、インスリン抵抗性があれば改善しましょうというのが結論です。
では、どの程度やせたらいいの?という結論ですが、アメリカでは BMI 30以上をBMI 25-30に、中国ではBMI 28以上をBMI 24-28に少し下げても劇的に流産率が低下しませんよとしています。太り過ぎの人は継続的に生活習慣・運動習慣を意識することが大事であるとしています。
また女性年齢についても触れられています。同年代で比較するとPCOS女性と非PCOS女性では、卵巣予備能が十分あるPCOS女性の方が高齢になっても妊娠率が担保されるようです。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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