一卵性双胎は胚盤胞のグレードと関連する?(論文紹介)

一卵性双胎は、自然妊娠では約0.45%、体外受精では約1.36%と報告されています。体外受精で一卵性双胎率が高いのは、培養時間の延長、培養液、あるいは固有の胚盤胞パラメータのいずれによるものかは不明でした。
胚盤胞パラメータ(体外培養時間、胚盤胞期、内細胞塊および栄養膜外胚葉の状態)と、体外受精での一卵性双生児の発生率との関連を調べた論文をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Wenhao Shi, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021.DOI: 10.1016/j.ajog.2021.06.101

4つの大学病院の多施設、大規模、電子データベースのデータを用いたレトロスペクティブコホート研究です。2014年1月から2020年2月に単一胚盤胞移植を行った全ての臨床妊娠を対象としました。胚盤胞形態はガードナー分類に基づいて評価しました。ロジスティック回帰モデルを用いて解析を行っています。
結果:
一卵性双胎率は1.53%(26,254例中402例)でした。一卵性双生児の発生率は、体外培養期間(5日目と6日目)や胚盤胞のステージ(初期から拡張、ハッチングレベルなど)とは関連がありませんでした。一方、一卵性双胎は、内細胞塊のグレードが低く(B対A:調整相対リスク1.67[95%CI、1.28-2.25]、C対A:調整相対リスク1.98[95%CI、1.18-3.11])、栄養膜外胚葉のグレードが高い(B対C:調整相対リスク1.38[95%CI、1.03-1.92]、A対C:調整相対リスク2.14[95%CI、1.45-3.20])ことと関連していました。一卵性双胎の発生率は、内細胞塊がグレードAで栄養膜外胚葉がグレードBまたはCの胚盤胞で最も低く(0.82%)、内部細胞塊がグレードBまたはCで栄養膜外胚葉がグレードAの胚盤胞で最も高くなりました(2.40%、調整相対リスク、2.62、95%CI、1.60-4.43)。
結論:
一卵性双胎発生率は、胚盤胞の形態と関連しており、その中でも内細胞塊の細胞が緩く配置され、栄養外胚葉の細胞がしっかりと詰まっている胚盤胞に特有のものでした。

≪私見≫

内部細胞塊が緩いと一卵性双胎になりやすいのは、個人的には同じ印象をもっております。過去の一卵性双胎との関連は下記のポイントで議論されていますが、結論に至っていません。私個人としては様々な手技の組み合わせにより発生率は変わると思っていますので、クリニックごとの成績をモニターすることが大事だと考えています。
①アシストハッチング(AH)
アシストハッチング後に一卵性双胎の割合が高くなったという最初の報告があってから様々な解析が行われて、反対にアシストハッチングしない方が一卵性双胎の割合が高くなったという論文もでてきていて、結論がでていません。
理由として、初期胚で行う場合や胚盤胞で行う場合の差もありますし、アシストハッチングの仕方もレーザー、物理的、化学的な様々な実施方法やハッチングのホールの大きさなどもありますので均一化できないのが現状です。
②新鮮胚移植または凍結融解胚移植
凍結融解胚移植の方が一卵性双胎の割合が高くなるという報告が多くあります。ただ、今回の結果では凍結融解胚移植の方が一卵性双胎の割合は低くなっています (1.27% vs 2.39% P < 0.001)。
最近のメタアナリシスでも凍結融解胚移植と一卵性双胎の関連は示されませんでした(Busnelli A,et al. 2019)。AHを行うかどうか、どのような状態・方法で凍結するかどうかなどで差がつくのでしょうか。
③培養時間
初期胚移植よりも胚盤胞移植の方が一卵性双胎の割合が高くなるという報告が多くあります。しかしday5、day6、day7胚盤胞の胚移植を比較してday7胚盤胞の方が、一卵性双胎リスクが高いという報告はありません。培養時間ではなく、戻す胚の状況が大事だと思います。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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