妊娠前男性パートナーの喫煙と流産の関係(論文紹介)
ブライダルチェックやプレコンセプショナルチェックということをよく耳にするようになりました。妊娠を望むカップルが事前に一緒に話し合えるのは理想だと思います。女性の妊娠のしやすさについてはライフスタイルに関しても様々な報告がありますが、男性側はほとんどありません。
今回システマティックレビューがでましたのでご紹介いたします。
≪論文紹介≫
Nadia A.du Fossé, et al. F&S Reviews. 2021.
妊娠前の男性パートナーのライフスタイルと流産との関連を検討することを目的としました。PubMedおよびEmbaseデータベースを2020年8月までを対象に「妊娠前の男性パートナーの喫煙,飲酒,肥満」をキーワードに英語論文を検索しました。
結果:
3,386件の論文中、条件を満たした11件を対象としました。8件の研究のメタアナリシスでは,母親の喫煙状況を調整した上で,妊娠前の男性パートナー喫煙量が1日10本を超えると,流産のリスクが増加することが明らかになりました(1~10本/日:リスク推定, 1.01;95%CI,0.97~1.06,11~19本/日:リスク推定, 1.12;95%CI,1.08~1.16,20本/日以上:リスク推定,1.23;95%CI,1.17~1.29)。
5件の研究によると、妊娠前の男性パートナーの飲酒と流産の間に明確な関連性は認められませんでした。妊娠前の男性パートナーの肥満と流産との関連を評価した適切な論文はありませんでした。
結論:
妊娠前の男性パートナーの喫煙と流産の関連性について、注意を喚起する必要があります。
≪私見≫
妊娠前の男性パートナーの喫煙は女性流産に関連することがわかりました。この論文でも課題としてあげていますが、様々な因子を調整したとしても、喫煙習慣があるような社会的背景や妊娠前、中、後を含む妻の受動喫煙、女性のパートナーと一体となった喫煙習慣などのバイアスはぬぐいされません。
また、妊娠前の男性パートナーの喫煙習慣が男性の生殖機能にどのように影響を与え流産リスク上昇につながるのか、禁煙後の回復期間など、まだまだわかっていないことばかりです。ただ妊娠を考える時、女性だけではなく男性側にも目を向けられるようになったのは良い状況だと思っています。
要点は以下のとおり
- 母親の喫煙状況を調整した上で、妊娠前の男性パートナーの喫煙量が1日10本以上であれば、流産リスクが増加すること
- 妊娠前の男性パートナーのアルコール摂取量と流産リスクとの間に明確な関連性は認められていません。
- 妊娠前の男性パートナーの肥満度と流産リスクの関連を示した報告はありません。
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。