初期胚に対する透明帯孵化補助
最近は胚盤胞で移植することが殆どですが、稀に、胚盤胞で移植しても妊娠されなかった方が初期胚(8細胞)を移植した結果、妊娠される方がいらっしゃいます。また、患者さんの御希望により初期胚で凍結・移植する場合もあります。
以前のブログ記事で、凍結した胚盤胞をお腹に戻す前に、受精卵全面を覆っているゼリー状の殻、透明帯にレーザーを使って穴を開ける透明帯孵化補助について触れました。
胚盤胞ではなく初期胚をお腹に戻す場合も、胚盤胞同様、透明帯孵化補助を行いますが、やり方が胚盤胞とは少し異なります。今回は初期胚に対する透明帯孵化補助のお話をします。
胚盤胞と初期胚への透明帯孵化補助の違いですが、胚盤胞の場合は透明帯に完全に穴を開けますが、初期胚では透明帯表面を削るだけで穴は開けません。
穴を開けない理由ですが、この時期の受精卵の細胞同士は独立して存在している状態なので、仮に、透明帯に穴を開けてしまうと胚移植の弾み等で細胞がバラバラになって穴から外に飛び出して、細胞が無くなってしまう可能性があるためです。細胞が少なくなってしまうと受精卵は正常に育たなくなり、妊娠率は下がります。
したがって、初期胚では透明帯に穴を開けずに表面を削るだけにしています。削る範囲ですが、透明帯外周の半分(1/2)を削ります。その理由ですが、過去に凍結した初期胚の外周の1/2を削ってからお腹に戻したグループと1/4を削ってからお腹に戻したグループの妊娠率を比較した結果、1/2を削ったグループの妊娠率が1/4のグループに比べて高くなったためです。
Hiraoka K, Hiraoka K, Horiuchi T, Kusuda T, Okano S, Kinutani M, Kinutani K. Impact of the size of zona pellucida thinning area on vitrified-warmed cleavage-stage embryo transfers: a prospective, randomized study. J Assist Reprod Genet. 2009 Sep-Oct;26(9-10):515-21. doi: 10.1007/s10815-009-9350-6.
当クリニックで行っている初期胚への透明帯孵化補助について知って頂ければ幸いです。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。