クロミッド®内服により移植成績は低下する?(論文紹介)

私たちの成績では採卵直後の周期での排卵周期凍結融解胚移植の成績は低くなっています。これは、さまざまな切り口の考え方があり、それぞれのクリニックが患者様に沿った凍結融解胚移植を選択していくはずです。
クロミッド®︎内服後、凍結融解胚移植を実施する際に、クロミッド®が子宮内膜容能に影響を与えて移植成績が下がるという報告、下がらないという報告共にありますのでご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

①クロミッドが子宮内膜容能に影響を与えて移植成績が下がるという論文

Nakagawa Kら.Reprod Med Biol. 2014. DOI: 10.1007/s12522-014-0195-z.
2008年3月-2010年3月までに、クロミッドrFSH療法で体外受精を実施し子宮内膜が薄いために新鮮なETを実施できなかった女性378名(女性年齢 平均35.2歳)に、体外受精周期で最後のクロミッド内服から胚移植の日までの期間に応じて妊娠率を評価しています。刺激法はクロミッドrFSH療法で排卵誘発にはuHCG10000単位もしくはGnRH点鼻を使用しています。移植周期はホルモン補充療法で実施しています。新鮮胚移植を中止する基準は移植日内膜を8mmとしています。
結果:
最後のクロミッド治療から凍結融解胚移植の日までの期間が91日以上のグループの妊娠率は、90日以下のグループの妊娠率よりも有意に高くなっています(p <0.05)。
この報告ではホルモン補充周期で準備した子宮内膜厚はクロミッド内服後の期間によって差はありませんでした。

②クロミッドが子宮内膜容能に影響を与えて移植成績が下がらないという論文

K Kato ら. Hum Reprod Open. 2018. DOI: 10.1093/hropen/hoy006
2010年1月から2014年12月までに,157件の自然周期体外受精に単一胚盤胞移植を実施し,1496件のクロミッド単独体外受精に単一胚盤胞移植(n=24)または単一胚盤胞凍結融解胚移植(n=1472)を実施しました。単一胚盤胞凍結融解胚移植周期は、クロミッド投与の最終日から単一胚盤胞凍結融解胚移植の日までの期間によって2つのグループに分類(A:≦60日、B:≧61日)し、これらのグループで妊娠成績を比較しました。卵巣刺激はクロミッド単独刺激のうえ、ブセレリン点鼻にて排卵誘発をしています。凍結融解胚移植は自己の排卵周期で行っております。
結果:
クロミッド-新鮮単一胚盤胞移植群(29.2%、7/24)の出生率は、自然採卵群(56.1%、88/157)(P = 0.01)および単一胚盤胞凍結融解胚移植-A群(50.0%、572/1143)(P = 0.04)に比べて有意に低い結果となりましたが、単一胚盤胞凍結融解胚移植-B群(47.4%、156/329)とは差がつきませんでした。多変量ロジスティック回帰分析の結果、出生率は自然採卵群と単一胚盤胞凍結融解胚移植群は同程度でしたが、新鮮単一胚盤胞移植群では有意に低くなりました(調整オッズ比:0.324、95%CI:0.119-0.800、P=0.01)。

②の論文には①の論文もDiscussionに引用されています。
クロミッド単独の影響として内服後の成績が落ちるというよりは、外因性ゴナドトロピン(HMG、rFSH、hCG)などを併用しているため、複合的な要因に影響するのではないかとしています。
両方の論文をあわせてみていると以下のようになります。
・クロミッド単独で新鮮胚移植をすると成績がおちる。
・クロミッド単独内服後の採卵後に凍結融解胚移植をすると成績はおちない。
・クロミッド+外因性ゴナドトロピン併用では少しの間凍結融解胚移植をすると成績はおちる。

クリニックによって同じ薬を使っていても、少しずつの判断の違いで臨床結果に影響を及ぼすことがあります。私個人の考えとしては、こういう過去の報告を踏まえてクリニック独自の成績と照らし合わせ方針をきめていくことが大事なんだと考えています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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