体外受精妊娠の子供の成長パターンは?(論文紹介:メタアナリシス)

ARTに限らず、子どもの成長やその後の疾病リスクは多因子要素だと考えられています。その中で不妊症自体も因子の一つではありますし、体外受精治療も因子の一つとして考えるのは普通のことだと思います。昨日ご紹介したMaria C Magnusらの報告、「体外受精妊娠の子供の成長パターンは?(論文紹介:ノルウェー)」はまだ含まれていませんが、今までの過去の報告をまとめたメタアナリシス(2019年)がございますのでご紹介させていただきます。
Bay B ら. BJOG. 2019. DOI: 10.1111/1471-0528.15456

≪論文紹介≫

体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)で妊娠した子どもの出生後の身長と体重について,自然妊娠で生まれた子どもと比較した文献を系統的にレビューすることを目的としました。オンラインデータベースのPubMed,Embase,Scopusを用いて体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)により妊娠した単胎児をART群とし、自然妊娠した単胎児を対照群とするコホートまたはケースコントロール研究を行いました。
メタアナリシスはCochrane Review Managerを用いて、研究の質は、Newcastle-Ottawa Scaleで評価しました。
結果:
20件の研究中、13件がメタアナリシスを対象としました。メタアナリシスでは、体外受精・顕微授精で生まれた3,972名の子どもと、自然妊娠で生まれた11,012名の子どもを比較し、子どもの体重に統計的に有意な差は見られませんでした[体重の平均差(MD)は-160g、95%信頼区間(95%CI)は-360、3]。
フォローアップ時の子どもの年齢で層別すると、体外受精/顕微授精治療後に妊娠した0~4歳の子どもの体重が有意に低くなりましたが(MD -180 g;95%CI -320, -4)、5歳以降の子どもではもはや有意ではなくなりました(MD -160 g;95%CI -580, 260)。プール解析では、小児期の身長には統計的に有意な差はありませんでした。
結論:
体外受精/顕微授精は、長期的な体重および身長とは関連しませんでした。

≪私見≫

研究によって体外受精児の長期予後には様々な見解があります。体外受精や顕微授精、不妊治療を受けて生まれた子どもの成長と代謝については、さらに長期的な追跡調査が必要ですね。でも今のところ問題がないという報告が多いので、それはそれで治療に関わる医師として少しほっとする部分もあります。
①小さく産まれたきたりする成長障害は就学前においつくという考えの報告
(Yeung EHら. 2016, Woldringh GHら. 2011, Koivurova Sら. 2003, Knoester Mら. 2008, Ceelen Mら. 2008, Bonduelle Mら. 2004)
②自然妊娠した子供に比べて身長や体重が低い状態が続くという報告
(Saunders Kら. 1996, Miles HLら. 2007, Green MPら. 2013)
③胎児期・新生児期の早期キャッチアップ成長が、その後の罹患リスクと関連することを示した報告
(Barker DJPら. 1993, Eriksson JGら1999)

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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