卵巣刺激に用いるHMG製剤とは(2023/9改定)

排卵誘発で用いられるゴナドトロピン療法は大きくわけて①卵胞の発育を促すFSH製剤とhMG製剤)と②卵胞が発育した段階で排卵を促すLH作用のあるhCG製剤にわかれます。一般不妊でも体外受精でも用いることがあるhMG製剤、どんな薬剤か患者様はわかりづらいですよね。
知らないことによる不妊治療への恐怖心や不信を生み出す可能性があるので、hMG製剤を取り上げてみたいと思っています。

ゴナドトロピン製剤は、閉経婦人科尿由来のhMG製剤/ FSH製剤と遺伝子組み換え型ヒトFSH製剤(recombinant FSH: rFSH)があります。
LH含量がFSHの0.0053以下のものをFSH製剤、それ以上のものをhMG製剤と言います。現在日本国内において薬事法で認められて使える薬剤は以下の通りとなります。

 

製剤名

FSH:LH比

2023年現在の薬価

hMG製剤

HMG注射用®︎ 75/150単位「F」

1:0.33

75単位 :1,026円/瓶
150単位:1,464円/瓶

HMG注用®︎「あすか」 75/150単位

1:0.33

75単位 :1,305円/瓶
150単位:1,464円/瓶

FSH製剤

uFSH注用®︎ 75/150単位「あすか」

1:0.0053

75単位 :1,368円/瓶
150単位:2,167円/瓶

 

rFSH製剤

ゴナールエフ皮下注ペン®︎ 75/150/300/450/900単位

1:0

450単位:16,792円/本
900単位:30,389円/本

レコベル皮下注ペン®12/36/72㎍

1:0

12㎍:10,712円/本
36㎍:26,293円/本
72㎍:45,582円/本

※保険診療で行う場合は、薬価の3割が薬剤料になります。注射費用の他、院内での注射をする場合は実施料(注射手技料)、自己注射の場合は在宅自己注射指導管理料などが発生します。

閉経婦人科尿由来のhMG製剤/ FSH製剤と遺伝子組み換え型ヒトFSH製剤(recombinant FSH: rFSH)の違いで、患者様にとって大きくインパクトがある点は、金額面、通院面、安全性だと思います。

①金額 rFSH製剤:高い vs. hMG製剤/ FSH製剤: 安価 
②在宅自己注射が薬事法で認められているか(自己注射を認められていない薬剤を自己注射した場合に万が一副作用が起きた場合は医薬品副作用被害救済制度の対象外にあります。)
rFSH製剤:認められている vs. hMG製剤/ FSH製剤: 認められていない
効果はどうでしょうか?
③効果 ESHREのガイドラインでは視床下部-下垂体性の機能不全の排卵障害(WHO group I)を除いて同等とされています。
④その他の問題点としては以下のことがあります。
尿製剤に関して
※将来、原材料の尿が安定供給されず薬剤入荷困難になる可能性
※精製後に残存する不純物が考えられる点
 これは下記に示すプリオン病もそうなんですが、FSH以外の夾雑蛋白が含まれているとアレルギー反応リスクが上昇したり、FSHの活性のばらつきが生じたりしてしまいます。
※未知の病原体の混入の可能性がある点
 一番メジャーなのはプリオンですよね。現在のところ、世界中でこれだけ尿製剤のhMG製剤/ FSH製剤を使用していて、医原性のヒトプリオン病は報告されていませんが、医原性クロイツフェルト-ヤコブ病は,死体からの角膜もしくは硬膜の移植,定位脳手術での電極の使用,またはヒト下垂体から抽出された成長ホルモン製剤の使用を介した感染例が報告されているので一次話題にあがりました。製薬会社も企業努力を行なっていて狂牛病発症地域をさけた閉経婦人科尿を用いたり、尿を集める際の規制を強めたりしています。その他の製造工程としても複数の精製過程(カラム吸着・限外濾過による濃縮や無機塩との共沈など)を行ったりしますので現在のところ問題ないという通達を世界でも日本でも出しています。

rFSH製剤の薬価がもう少し下がったり、体外受精が保険適応になれば患者様に提供しやすくなるのにな、と日々考えています。ただ、日本では遺伝子組み換え型ヒトLH製剤(recombinant LH: rLH)が販売されていないので、hMG製剤を完全に卵巣刺激からなくすことは生殖医療成績を考えると難しいと思っています。
ちなみにhMG製剤のLH成分は、よく教科書に「LH活性をもつ」と書かれています。これは何故か?LH活性の一部をhCGで賄っているからなんです。別途記載させていただきます。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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