妊娠していない女性でもhCGは陽性になることがあるの?

妊娠していない女性でもhCGが上昇していることがあり、その際には様々な鑑別を考えなくてはいけません。非妊娠女性のhCG上昇の原因としては、卵巣腫瘍を代表とするhCG産生腫瘍のほか、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、消化器がん、乳がん、肺がんなどの他の非婦人科悪性腫瘍における腫瘍随伴症候群としても報告されています。また測定の偽陽性も考えられます。

hCG産生のもう一つの原因は、閉経前または閉経後の女性における下垂体です。
卵巣ステロイドホルモン合成が減少し、GnRHの負のフィードバック制御が解除されることからと考えられており、Snyderらは、非妊娠女性のhCG濃度が年齢とともに上昇し、非妊娠の閉経前・閉経後グループでは偽陽性のhCG上昇を引き起こすことを報告しており、閉経後女性の血清hCG正常値の上限を14.0 IU/Lとすることも推奨しています。
更に、閉経後女性の下垂体の免疫染色によりhCGが局在していることも確認されています。28人の非妊娠女性の低値hCG陽性患者(平均:9.5±6.5mIU(範囲、2.1~32.0))を対象とした症例報告ではホルモン補充療法を最低2週間実施すると下垂体hCG産生を抑制することを報告しており、ホルモン補充療法を実施した18名全員のhCGレベルが 2mIU未満に抑制した。この報告では29、35、39歳の若年女性の原発性無月経または外科的卵巣摘出術による早発閉経の患者も含まれていたので、私たちの診療でも遭遇する可能性があるかもしれません。

今回、非妊娠女性のhCG分泌をあえてテーマに挙げたのは、卵巣刺激に関わる薬を理解するうえで必須な知識だからです。また改めてご紹介いたします。

  1. Cole LAら.  N Engl J M. 2007
  2. Matsuura Sら. Nature. 1980
  3. Cole LAら. Am J Obstet Gynecol. 2008
  4. Soni Sら. Indian J Nephrol. 2013
  5. Snyder JAら. Clin Chem. 2005
  6. Suginami Hら. J Clin Endocrinol Metab. 1982

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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