当クリニックの災害対策〜非常時電源について〜

患者さまの検体を守るために災害対策は非常に重要です。今回は非常時電源について説明致します。当クリニックでは非常用発電装置を備えております。燃料は軽油、定期的に点検・燃料補充を行っております。稼働時間は31〜72時間と使用条件により異なります。使用電気料が多いと31時間、必要最小限の使用では72時間となりますが、最低でも31時間は大丈夫という計算になります。

停電が起きたことを想定してみます。停電が起きると、電気供給停止を察知して、速やかに非常用電源装置に切り替わります。この時点から最低でも31時間目までは電気の供給があります。通常、受精卵の培養は最長7日間行われるため、31時間(≒約2.9日間)では最後まで培養を続けることが出来ません。しかし、心配することはありません。受精卵は、採卵から何日目でも凍結保存をすることが可能で、どの時点で凍結をしても受精卵を劣化させることはありません。したがって、停電が起きて非常用電源装置が稼働した場合は、お預かりしている受精卵を全て凍結保存します。受精卵の凍結保管に電気は一切用いませんので(液体窒素を使用)、電気の供給が止まるとなると、一番安全な保管方法は凍結保存となります。31時間(≒2.9日間)もあれば、お預かりした全ての受精卵を凍結保存するために時間は十二分にあります。凍結保存は受精卵の発育を一時停止するようなものなので、電気の供給が再開されれば、解凍して一時停止を再生すれば、体外受精治療を再開出来ます。

私は東日本大震災の際、別の病院に勤務しており、クリニックが入っていたビルが計画停電区域に入っていたため、急遽、お預かりしていた受精卵を全て凍結保存致しました。その後、電気の供給が復帰してから、凍結保存をしていた受精卵を解凍し、この時に全ての受精卵を凍結していた患者さまの何人かの方はその後、無事妊娠されました。

この度、千葉県内に大きな被害をもたらした台風15号による停電で心配になられた方も多いのではないでしょうか。当クリニックに受精卵をお預けになっている患者さまは、停電対策に関しては安心して頂ければと思います。

文責:平岡(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。