第20回千葉リプロダクション研究会 演題報告(2)
培養士の内田のぞみです。9/28(土)に行われた第20回千葉リプロダクション研究会・学術発表会にて「子宮内膜症患者から採卵された卵子の形態と2施設での胚発生の検討」という題で発表させていただきました。
子宮内膜症とは、子宮内膜(受精卵のベッドになる部分)と似た組織が子宮とは別の場所(卵巣等)で増殖してしまう疾患です。不妊症の女性では約20%にみられますが、直接的にどのような悪影響があるのか、未解明な部分が多い疾患です。今から20年程前の研究では、子宮内膜症患者の体外受精成績は低下するという報告が多くみられました。しかし、近年では卵巣刺激法、採卵技術、培養技術などの改善が著しく、以前と同様の結果となるのか疑問を感じたため、今回、亀田IVFクリニック幕張と東京医科歯科大学の2施設で子宮内膜症患者の体外受精成績について検討しました。その結果、2施設で子宮内膜症患者の体外受精成績(正常受精率、良好分割期胚率、良好胚盤胞率)は子宮内膜症の無い患者と変わらないことが分かりました。
一方で我々培養士が卵子を観察している際、約90%の卵子は正円形をしていますが、まれに楕円形の卵子を見かけます。
このような楕円形の卵子は子宮内膜症患者から多く採取される印象があったため、もう一つの検討として、子宮内膜症患者において楕円形の卵子の割合が増加するか検討しました。この結果、子宮内膜症患者において楕円形の卵子の割合は増加することが分かりました。しかし、子宮内膜症のあり・なしに関係なく、楕円形の卵子の受精率やその後の発育などは正円形の卵子と比べて変わらず、楕円形=悪いということはありませんでした。
以上の結果から、子宮内膜症患者から採取された卵子は楕円形の割合は多くなるものの、楕円形であっても、その後の体外受精の成績を低下させるものではないことが本研究より明らかになりました。
今回の研究を元にして書いた論文が受精着床学会雑誌の優秀論文賞を受賞しました。
日々の培養業務の小さな気づきから生まれた研究が、このような賞に結びついたことは今後の業務を行う上で大変励みになります。今後も培養士の目線を生かせる研究ができればと思います。
この研究を行うに当たりご指導いただいた東京医科歯科大学の石川智則先生、培養室の村形佐知さん、野中美幸さん、諸先生方に深く感謝いたします。
文責:内田(培養士)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。