不妊に悩む方への不妊治療費助成事業の拡充について
『不妊に悩む方への特定治療支援事業の拡充について』が厚生労働省のホームページに掲載された旨を先般当院のホームページでもお知らせいたしましたが、千葉県からも国からの通知を受け、県事業の要綱を改正し、運用を開始する旨の通達が参りましたので、改めて皆様にお知らせします。
千葉県からの通達に、わかりやすく改定案が纏めてありましたので助成に関する部分を引用させていただきご紹介します。
改定案(R2.12.15時点)
助成について
現行 | 拡充後 | |
対象者の要件(所得制限) | 夫婦合計730万円未満 | 撤廃(所得による制限なし) |
対象者の要件(婚姻関係) | 法律婚の夫婦のみ | 法律婚及び事実婚の夫婦 |
助成額 | 初回のみ30万円まで 2回目以降15万円まで (C.Fは7.5万円まで) |
初回及び2回目以降も30万円まで (C.Fは10万円まで) |
助成額(男性不妊) | 初回のみ30万円まで 2回目以降15万円まで (Cは対象外) |
初回及び2回目以降も30万円まで (Cは対象外) |
通算助成回数 | 初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢により ①40歳未満→通算6回まで ②40歳以上→通算3回まで |
初めて助成を受けた際の治療期間の 初日における妻の年齢により ①40歳未満→通算6回まで(1子ごと) ②40歳以上→通算3回まで(1子ごと) ※助成を受けた後に出産した場合又は12週以降に死産に至った場合に、通算助成回数をリセットすることができる |
対象年齢 | 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満の夫婦 | 変更なし |
*治療ステージの説明
C:以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施
F:採卵したが卵が得られない、又は状態のよい卵が得られないため中止
*対象:2021年1月1日以降に治療が終了した治療
*国は出産を希望する世帯を広く支援するため、不妊治療の保険適用を検討していますので、保険適用までの間、現行の助成措置を大幅に拡充することを目的としています。
*政府の補正予算案として決定したものであり、正式に本制度の拡充が確定するのは当該補正予算案が原案通り成立した後となります。
千葉県では実際の運用スケジュール等はまだ出ておらず、早急に運用開始できるよう準備中とのことです。今の時点で自治体の保健所等にお問合せをされても明確なお答えをいただけない場合もあるかもしれませんのでご了承ください。
なお、本事業と別に自治体により独自の助成制度をもつ場合もありますので各自治体の保健所のホームページなどもご参考になさってください。
日本では、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、夫婦全体の 5.5 組に 1 組といわれています(国立社会保障・人口問題研究所「2015 年社会保障・人口問題基本調査」による)。また、2018 年には56,979 人が生殖補助医療(体外受精、顕微授精、凍結胚(卵)を用いた治療)により誕生しており、全出生児(918,400人)の約16人に 1 人に当たります( 日本産科婦人科学会「ART データブック(2018 年)」、厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計」による)。
キャリアを重ねて仕事と不妊治療を両立に苦しむ方にとっては経済的支援だけではなくまだまだ社会全体としての支援が望まれますが、今回のこの助成金の拡充は、これだけ体外受精が身近な治療になっていても所得制限や、法律上のご夫婦でないことで治療を諦めていた患者さまにとっては治療の一助になる内容なのではないかと思います。
文責:石川恵(事務長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。