ヒト由来リコンビナントFSH製剤による日本人女性の卵巣刺激調査(論文紹介)

2021年最初の論文紹介のブログは本年度発売になる可能性があるレコベル皮下注ペンという新しいタイプのリコンビナントFSH製剤の日本での臨床試験の結果をお話しします。
ヒト由来(PER.C6; Crucell)を用いたリコンビナントFSH である follitropin delta(レコベル皮下注ペン) はCHO(ハムスター)由来のリコンビナントFSHよりも全体的にシアル酸含量が高いグリコシル化プロファイルを有しているため、クリアランスが低く、半減期が長い特徴があります。
Osamu Ishiharaら. Fertil Steril. 2020. DOI 10.1016/j.fertnstert.202:0.09.134.

≪論文紹介≫

日本で実施された多施設無作為化介入実施者単盲試験です。AMH値(低値5.0~14.9pmol/L、高値15.0~44.9pmol/L)で層別化しており、158名の日本人女性(20~39歳)を対象としました。
刺激法と基準は下記の通りです。
月経周期の2~3日目に、患者は6mg、9mg、または12mgのフォリトロピンデルタ(レコビル、72mg/2.16mL; Ferring Pharmaceuticals)、または150IU/dのフォリトロピンベータ(フォリスチム、900IU/1.08mL; MSD)の1日量を固定化したリコンビナントFSHアンタゴニスト法にて卵巣刺激を行いました。
アンタゴニスト(ガニレスト;MSD)を1日量0.25mgで刺激6日目に固定で開始しトリガー日まで実施しました。卵胞径17mm以上が3つ以上観察された場合に5,000IUのhCGトリガーを行っています。卵巣反応不良(刺激10日目に径10mm以上の卵胞が3個未満)の場合は治療を中止しています。OHSSが疑わしい場合(卵胞径12mm以上の卵胞数が25~35個の場合)も治療を中止するか点鼻トリガーとして採卵し胚移植対象から外しています。胚移植は新鮮胚day5移植としています。
結果:
6mg/日、9mg/日、12mg/日のフォリトロピンデルタ群で回収卵子数はそれぞれ7.0±4.1個、9.1± 5.6個、11.6± 5.6個であり、有意な用量相関が認められ、各AMH層内でも同様の結果となりました。また、フォリトロピンデルタによる刺激終了時の血清エストラジオール、インヒビンA、プロゲステロンにも有意な用量相関が認められました。フォリトロピンデルタを用いた開始周期あたりの心拍の確認できた妊娠率は、6 mg/日で19%、9 mg/日で20%、12 mg/日で25%でした。早期中等度/重度のOHSS発生率は、フォリトロピンデルタでは 6 mg/日: 8%、9 mg/日: 8%、12 mg/日: 13%で、OHSS発症例の 82%がAMHの高い群でした。

≪私見≫

年始にこの論文紹介を選んだ理由です。
先日、卵巣予備能の検査ではAMHとAFCは同様の卵巣予備能の精度をもっていることを取り上げました。それでもAMHをなぜ測定するのか。

私個人の意見としては「AFCよりも患者様に選択する卵巣刺激方法、卵巣刺激時の回収卵数などをイメージしやすくお話しできるから」と思っています。

文責:川井清考(院長)

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