AMHは卵巣刺激の反応予測に役立つの?(日本からの論文紹介)

この論文は国内の4施設のクリニックの卵巣刺激の反応性が年齢、AMH、LH、FSH、E2、P4のどの項目と相関がつよいか評価した報告です。
日本は海外と比べて低刺激が多いので、卵巣予備能と回収卵子数を調査した論文が中々ないんです。

Yoshimasa Asadaら. Reprod Med Biol. 2017. DOI: 10.1002/rmb2.12055

≪論文紹介≫

日本で行われた多施設の後方視的横断的研究で月経2~4日のAMHを用いて、調節卵巣刺激(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)の卵巣反応予測の評価を行いました。対象は2014年12月から2016年3月までの間、20~45歳の体外受精を希望する女性236名(年齢中央値は36歳(33~39歳)、BMI中央値は20.1(19.1~21.8)kg/m2、AMH濃度中央値は2.38(1.47~3.75)ng/mL、回収卵子数中央値は14(9~23))としました。PCOS症例、卵巣嚢腫症例、卵管水腫症例、子宮内膜症、刺激6ヶ月以内に卵巣手術の既往症例、60日以内に経口避妊薬内服症例、21日以内のホルモン治療症例は除外しました。
主要転機としてAMH濃度と回収卵子数の相関としました。AMHが回収卵子数と有意かつ強く関連しているかどうか回帰分析を行いました。(目的変数:回収卵子数、説明変数:年齢、AMH、LH、FSH、E2、P4)。
患者を「不良」反応群(回収卵子数3個未満)、「正常」反応群(回収卵子数4~14個)、「高」反応群(回収卵子数15個以上)にグループ分けしました(AMH中央値 「不良」反応群 1.20ng/mL;「正常」反応群 1.74ng/mL;「高」反応群 3.58ng/mL)。AMH、FSHおよびE2による卵巣反応性を評価するために、ROC曲線をプロットしました。またAUCも各項目について比較し、AMH が回収卵子数の予測因子として他項目よりも優れているかどうかを判断しました。

結果:

卵巣反応については、AMHの予測能力は、「不良」反応群-「正常」反応群、「正常」反応群-「高」反応群で差を認めました(P<.001)。FSHの予測能力は「正常」反応群-「高」反応群でのみ有意でした(P<0.001)。E2の予測能力は差を認めませんでした。
AMH の卵巣反応予測能力について、ROC カーブ分析と各群の AUC 値の比較によると、AMH は FSH、E2 と比較して「正常」反応群-「高」反応群では有意に高く、FSH、E2 と比較して「不良」反応群-「正常」反応群では低くなりました。
AMH と回収卵子数との相関を評価するために、回帰分析を行ったところ(目的変数:回収卵子数、説明変数:年齢、AMH、LH、FSH、E2、および P4)、AMH濃度と卵巣反応が最も強い相関を認めました

結論:

体外受精のための卵巣刺激に「正常」反応群で「高」反応群の患者に分類された患者において、AMH が FSH および E2 と比較して、回収卵子数と最も強く、非常に有意な相関関係を示し、卵巣刺激を受けている患者の中では、AMHが最も高い卵巣反応予測能力を示しました。

≪私見≫

この研究は日本のAMHの第一人者である浅田先生がまとめた報告です。
AMHは卵巣刺激の反応不良群の予測因子にはならないが、正常・高反応患者様にはよい指標になるという結果となりました。HMGの総投与量が書かれていないこと、AFCの記載がないことが残念ですが、私の中では低―正常反応群ではAMHよりFSH、E2が大事というところがこの論文の素晴らしい結果なんだと思っています。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張