男性不妊の診断・治療ガイドライン(AUA/ASRM編:2020年):手術以外の介入

(不妊治療のための医学的・栄養学的介入(Medical & Nutraceuticals Interventions for Fertility.))

36. 男性不妊は体外受精/顕微授精が治療選択になることがある。(Expert Opinion)
37. 医師は、精液検査を繰り返しても人工授精での妊娠率が改善しない運動精子数が少ない不妊カップルに対して、ARTによる治療を検討することを助言してもよい。(Expert Opinion)
38. 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を呈する患者は、障害の原因を特定するために評価し、診断に基づいて治療を行うべきである。(臨床的には当然)
39. 医師は、血清テストステロンが低い不妊男性に対して、アロマターゼ阻害薬(AI)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、またはそれらの組み合わせを使用することができる。(条件付き推奨;エビデンスレベル:C)
40. 現在/将来、挙児希望のある男性には、テストステロン単剤療法は処方すべきではない。(臨床的には当然)
41. 高プロラクチン血症の不妊男性は、病因を評価し、それに応じた治療を行うべきである。(Expert Opinion)
42. 医師は特発性不妊症の男性に、SERMの使用はART結果に関連する限られた結果しかしかないことを伝えるべきである。(Expert Opinion)
43. 医師は、男性不妊治療においてサプリメント(例えば、抗酸化剤、ビタミンなど)の有用性が臨床的に疑問の余地のあるものであることを患者に伝えるべきである。現存するデータは、この目的で使用すべき特定の薬剤の推奨を提供するには不十分である。(条件付き推奨;エビデンスレベル:B)
44. 特発性不妊症の男性に対しては、精子濃度、妊娠率、出生率の改善を目的として、卵胞刺激ホルモン(FSH)アナログを用いた治療を検討してもよい。(条件付き推奨;エビデンスレベル:B)
45. 非閉塞性無精子症患者には、外科的介入の前にSERM、AI、およびゴナドトロピンを用いた薬理学的操作を支持する限られたデータを知らせるべきである。(条件付き推奨;エビデンスレベル: C)

(簡単なポイントの説明)

体外受精/顕微授精は男性不妊の根本的な疾患を治療するわけではありませんが、顕微授精は今まで男性不妊が原因で妊娠にいたらなかったカップルに妊娠を可能にします。人工授精(IUI)でも精液所見の悪い患者の妊娠率には寄与しますが、処理後の運動性精子数が500万個未満の症例では妊娠成績が期待できません。(参考:当院ではクリニックの成績を基準に調整前運動精子数 200万としています。)

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症はLH/FSHの分泌が不足しています。LH/FSHの分泌が低下している場合、精巣のライディッヒ細胞からテストテロンが分泌されず、精子形成が障害されます。このような状況では、内分泌専門医もしくは男性生殖専門医への紹介が推奨されます。外因性ゴナドトロピンまたはpulsatile GnRH投与を行うことで精子形成を開始し妊娠の可能性を向上させます。ゴナドトロピン治療やhCG注射は血清テストステロン値の変動をモニターします。テストステロンの正常化した後、FSHまたはFSHアナログが精子形成を誘発するために追加したりします。
下垂体は機能している低テストステロンの患者のために、AI、hCG、およびSERMの投与は、内因性テストステロン産生を増加させるために異なるメカニズムで作用するため組み合わせても使用でき精子形成を改善するために役立ちます。
外因性テストステロンの投与は、視床下部-下垂体に負のフィードバックを提供し、ゴナドトロピン分泌の抑制につながる可能性があります。テストステロンによる抑制の程度によっては、精子形成が減少したり停止したりして、無精子症を引き起こすことがあります。

性欲減退・インポテンツ・テストステロン欠乏症を伴う男性は、高プロラクチン血症をルールアウトすることが重要です。

妊娠を試みる男性に提供されている様々なサプリメント(ビタミン、抗酸化剤、栄養補助食品)の使用を支持する明確で信頼できるデータはないと今回のガイドラインではされています。ただし、現在のデータでは、サプリメントは有害でもないと考えられていて価値判断は今後に期待というところでしょうか。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張