（診断）

9.精液検査の異常が複数ある場合に最も臨床的に意義がある。（Expert Opinion）
10.医師は、性欲障害、勃起不全、乏精子症または無精子症、萎縮性精巣、または身体検査でホルモン異常が疑われる男性に対して、FSHおよびテストステロンを含むホルモン評価を推奨すべきである。（Expert Opinion）
11.無精子症の男性は、最初に精液量、身体所見、FSH値に基づいて閉塞性か非閉塞性無精子症であるか評価すべきである。（Expert Opinion）
12.原発性不妊であり、FSH上昇/精巣萎縮を伴う/精子形成障害を疑う無精子症または重度の乏精子症（500万/mL未満）の男性には、染色体検査およびY染色体微小欠失分析を推奨すべきである。（Expert Opinion)
13. 医師は、血管形成不全または特発性閉塞性無精子症を有する男性には、嚢胞性線維症（CFTR）変異キャリア検査（5T対立遺伝子の評価を含む）を推奨すべきである。（Expert Opinion）
14. CFTR変異を有する男性には、女性パートナーの遺伝子評価を推奨すべきである。(Expert Opinion)
15. 精子DNA断片化検査は、不妊カップルの初期評価では推奨されない。(中程度の推奨；エビデンスレベル：C)
16. 精液検査で円形細胞が増加している男性（>100万/mL）は、白血球（膿精子症）と生殖細胞の鑑別を行うべきである。（Expert Opinion）
17. 膿精子症の患者は感染症の有無を評価すべきである。(臨床的には当然)
18. 男性不妊の初期評価で抗精子抗体（ASA）検査を行うべきではない。（Expert Opinion）
19. 反復流産をきたすカップルの場合、染色体検査（Expert Opinion）と精子のDNA断片化で評価されるべきである。(中程度の推奨；エビデンスレベル：CC)
20. 診断精巣生検は、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症を区別するために日常的に行われるべきではない。（Expert Opinion）

（イメージング）

21. 精巣の超音波検査は、不妊男性の初期評価で日常的に行うべきではない。（Expert Opinion）
22. 経直腸超音波検査は、初期評価の一部として行うべきではない。臨床家は、射精管閉塞を示唆する精液検査（酸性、無精子症、精液量1.5mL未満、血清テストステロンが正常、精管触知可能）を有する男性にTRUS（経直腸的前立腺超音波）を推奨すべきである。(Expert Opinion)
23. 医師は、孤立性の小型または中等度の右精索静脈瘤の単独適応のために腹腔内画像検査を行うべきではない。(（Expert Opinion）)
24. 血管形成不全を有する患者には、医師は腎異常の評価のために腎超音波検査を推奨すべきである。(Expert Opinion)

（簡単なポイントの説明）

精液検査の個々のパラメータ（濃度、形態、運動率など）に少しずつ異常があるからといって、不妊原因であると診断することは難しいです。ただし、異常なパラメータの数が増えるにつれて妊娠はしづらくなるのは確かです。今回のガイドラインではExpert opinionとして、精液所見が悪ければARTではなく男性側の採血を含めた精査が書き込まれているのは女性診察のついでに精液検査だけしようというステージから、「夫婦で治療しよう」という流れに大きく変わってきていることを感じます。

先天性両側精管欠損症（CBAVD）を含む先天性閉塞性無精子症の男性は、嚢胞性線維症（CF）検査を受ける必要があります。日本では患者数が少ないので、あまり遭遇することはありません。

精子のDNA断片化について触れられたことは大きい進歩だなと思います。

1. ART治療の結果に悪影響を及ぼす可能性があること
2. 流産率の増加を含む自然妊娠の可能性にも影響を及ぼす可能性があること
3. 精子のDNA断片化異常の原因のいくつか（抗うつ薬の使用や生殖器感染症など）は管理することで正常に戻すことが可能であること

が記載されています。ただ、まだまだ質の高い研究がないためDNA断片化検査は不妊症の男性の初期評価では日常的に行うべきではないとされていて、私たちも同じように感じています。反復流産に関しても染色体検査の評価以外に精子DNA断片化の検査を行うことが推奨されるとしたのも画期的だと思います。

文責：川井（院長）

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張