体外受精へのステップアップ ①原因(亀田IVFクリニック幕張 開設-2020年11月現在)
当グループではタイミング法で治療開始した患者様の約20%が、残りの患者様で人工授精に進まれた方のうち約17%が妊娠卒業されていきます。
では残りの患者様は、今後どのように治療に進まれるのでしょうか?
治療を中断される方や転院を選ばれる方もいらっしゃいますが、多くの方は体外受精にステップアップされます。
体外受精には、もちろん以下の通り適応があります。
①卵管障害、②男性因子、③子宮内膜症、④抗精子抗体、⑤その他
当院の初診また検査を行った患者様の中で上記の適応を満たす方どれくらいいらっしゃるか調べてみました。
①卵管障害は、当院で子宮卵管造影を実施した患者様の約18%(250/1473)
②男性因子は先述したブログにも記載しましたが、運動精子2000万以下は約35%、よりシビアな1000万以下は約22%に当たります。
③子宮内膜症は、当院の超音波で卵巣に子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)を強く疑われる患者は約9%(334/3746)
④抗精子抗体は、2019年度から体外受精前には測るようになりましたが現在の陽性率は約3%(11/397)です。
⑤その他は、女性年齢の高齢化に依存する妊娠率の低下によるものや、原因がわからないけれどタイミング・人工授精で妊娠に至らなかった患者様です。
もちろん、体外受精の適応を満たす患者様の中でもタイミング・人工授精で妊娠している患者様も多くいらっしゃいますので、個別に患者様と治療方針を相談しながら進めています。
体外受精にステップアップするメリットは、不妊治療の中でその周期あたりの妊娠率や出生率が一番高いところなのですが、医療者としては、不妊治療の原因がタイミング・人工授精より明確になることです。排卵しているように見えて、卵胞内が空胞であることや変性卵の場合もあります。受精がうまくいかない方、受精はできるけれど胚発生が不良なこともあります。いい受精卵はたくさんできるのに着床しない方もいらっしゃいます。体外受精を行うことによりこの辺りをクリアにすることで、より出産が近づいてくると思っています。
もちろん治療の終結についても患者様に事前に伝える義務もあると思います。
2019年7月日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会は「年齢上昇に伴う妊娠率の低下は容易ではないため、45歳かつ/または5回の採卵程度での治療中止を検討する提案が妥当」と提案しています。2018 年の国内の体外受精データはこちらのブログをご参照ください。(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_194.html)
私たちのクリニックのデータでは、卵巣刺激を行って育ってきた卵子を採卵すると、やはり全例が胚移植できるわけではありません。当院の方針としては、基本、複数卵胞が育ちそうな患者様には卵巣刺激を行いますので、一般的な排卵がある女性のデータとは異なりますが、採卵決定時に卵巣刺激を行って発育した13mm以上の卵胞数が1個、4個、10個以上の場合、それぞれの空胞の割合・変性卵や未熟卵の割合、成熟卵があっても移植まで到達しない割合、胚移植できる割合を下記の表に示しました。
こう考えると、複数卵胞があるうちに適切な卵巣刺激を行いステップアップするかがどれだけ大事か考えさせられます。
このあと、何回かにわたり当院の体外受精成績をアップしていきます。
文責:川井(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。