体外受精へのステップアップ ②受精・培養(亀田IVFクリニック幕張 開設-2020年11月現在)

成熟卵が採卵によって回収できた後、卵子・精子の処理は培養室が医師の指示のもとに行います。培養業務は体外受精のキーとなる部分です。停電時のバックアップ体制は当然ですが、当院では下記のことを注意して行なっております。
①取り違え防止
卵子・精子のバーコードシステムなどを使用した個別認証管理を行っています。
②必要業務の担当管理
培養業務の全ての行程に実施者・時間を記載しております。また顕微授精動画やタイムラプス動画なども過去のものも全て保存しており、治療を振り返れる体制をとっています。
②チーム制
現在、採卵後から凍結・胚移植まで大きく2チームにわけ、新型コロナウイルス感染など、万が一の場合も業務がストップしないよう配慮を行なっています。

「培養業務の見える化」は患者様にとって安心材料にもつながりますし、何より私たちの医療技術の向上につながります。当院の評価システムは以前ブログにとりあげさえていただいております。(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_43.html

最新のデータで振り返りたいと思います。

  1. 受精方法:成熟卵が獲得できたあと、卵子の状態だけではなく精子の当日の状態・事前のデータなどから総合的に受精方法を検討いたします。
    当院の受精方法は、IVF(媒精): 32.2%、ICSI(顕微授精): 41.6%、split(IVFとICSIを組み合わせた方法): 26.2%と昨年よりICSIの割合が増えました。この結果は、本年2月にニュース番組で培養室の取り組みをとりあげていただいたことで、顕微授精が必要な患者様が県外から多数来院いただいた影響があると思います。
  2. 受精方法別の受精率・胚発生はどうでしょうか。
    正常受精率 IVF: 72.7%  ICSI: 82.7%
    正常受精あたりの良好胚盤胞率 IVF: 30.5%  ICSI: 29.2%
    IVFの正常受精率:70%を越えようという目標のもとに一年間取り組み、達成することができました。ICSIは85%を維持したいところですが未達となりました。
  3. 採卵あたりの移植できる胚数はどうでしょうか
    当院は移植を行う胚の時期は、初期胚:胚盤胞=18:82と8割以上が胚盤胞移植となっています。ですので、移植胚は大半が胚盤胞だと考えてください。
    採卵で成熟卵の回収個数別の移植できる割合は以下の通りです。
    1個: 39.9%、2個: 53.5%、3個: 66.0%、4個: 80.0%
    これらの結果から、卵巣刺激を行って、回収成熟卵4つまでは増やせるなら増やしたいというのが正直な気持ちです。

    ただし、女性の年齢による要因、卵巣予備能による要因などもありますので、年齢別に見たときの回収卵数から有効胚利用数(移植できる胚数)は下記のグラフのようになります。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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