人工授精へのステップアップ、妊娠率①(亀田IVFクリニック幕張 開設-2020年11月現在)

クエン酸クロミフェン、レトロゾールなどの排卵誘発剤を用いても一周期あたりの妊娠率は6~10%程度です。現在患者様に提供できる医療で、一番妊娠まで近いのは体外受精となるわけですが、できれば、その前に妊娠して欲しいのは患者様だけでなく医療者側も同じです。タイミング法より少しステップアップしたのが人工授精だと考えています。体外受精に移行する前に一般不妊治療が長引くことは、夫婦にとってストレスも蓄積し、費用対効果、女性年齢の加齢等を考えてもよくないことです。どのようにステップアップをするのがよいのか、このブログを通じて一緒に考えていければと思っています。
一般的に推奨されているのは、通院をしながら3回毎に今まで治療法を振り返り、医師と相談し次のステップについて話し合うことが大事です。
「この治療を続けても妊娠する確率はあがらないですよ!」という発言はカップルにとってストレスであるのは分かった上で、患者様個人の今の状態、そして、なぜステップアップを勧めるのか、ステップアップするメリット・デメリットは何かを患者様が理解する必要があるのだと思います。
当院でのタイミング法での累積妊娠卒業率は20%です(女性平均年齢:33.0±4.5歳)。この成績はクリニックによって、どのような不妊原因の患者様を受け入れているかによっても異なってくるかと思います。やはり6回目以降は妊娠している方が少ないので人工授精へのステップアップを勧めることが大半です。

人工授精をお勧めするのは、以下のような患者様です。
① 卵管が通っていて、男性側にも原因がなくタイミングをとっているのに妊娠しない原因不明
② 頸管粘液不良や過去の手術などの処置により頸管狭窄をおこしているような場合
③ 精子の所見が少し悪い場合
④ 射精障害・勃起障害
⑤ 軽度の精液所見異常
⑥ 軽度の内膜症患者様
お勧めしないのは、①卵管病変がある ②骨盤内感染症の反復既往がある ③重度の内膜症がある場合でしょうか。

ではステップアップした場合の人工授精の妊娠率を検討しましょう。 開院から2020年9月までに不妊治療で子供が欲しいと希望されて来院されたカップルの人工授精での妊娠率です。 人工授精で妊娠された患者様の女性平均年齢は34.4±3.9歳です。回数別の妊娠率、妊娠女性平均年齢を示します。また、円グラフは人工授精で妊娠した患者様が何回目で妊娠しているのかを示したグラフになります。

初回人工授精を開始した患者様を100とした場合、一定の割合でステップアップをなさっているか、当院での治療が休診となっています。3回以上人工授精を続けられる方が約50%弱、6回以降は約10%となっています。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張