不妊治療患者のタイミング妊娠率について②(亀田IVFクリニック幕張 開設-2020年11月現在)

一般不妊患者の妊娠について、もう少し掘り下げたいと思います。
まずは、どのような治療で妊娠しているかです。
タイミング法での治療の際、よく卵巣刺激に用いる薬剤はクロミッド®とレトロゾールですので、自然周期とクロミッド周期、レトロゾール周期、その他で区分けしてみました。多くの方が自然周期から開始し、クロミッド周期、レトロゾール周期とステップアップしていきます。
円グラフを見ていただくと、タイミング法で妊娠された方の約65%が自然周期であることがわかります。
アメリカ生殖医学会では、原因不明の不妊症には卵巣刺激を用いた人工授精を勧めていますので、排卵がある方にクロミッド・レトロゾールを使って治療しても、ある一定の回数で人工授精へのステップアップが好ましいのかもしれません。


それではタイミングをとっているうちは自然周期のタイミングがよいのかというと、そういうわけではありません。それぞれの方法の妊娠率で比較した場合を見てみると、自然周期は7.0%、クロミッド周期は8.4%、レトロゾール周期は11.0%となりました。双胎率は1.3%です。この結果からも自然周期タイミング法の妊娠率がいいわけではなく、やはり適切な時期の介入が好ましいのがわかります。

10回より多くタイミングをとり続けて妊娠した方がどの程度いるかも見てみました。11回目以降のタイミングで妊娠に至った方は13名15症例ありました。不思議なことに、その中の40%が流産に至っており妊娠継続できておりません。
長くタイミングをとり続けて妊娠した方は何か介入をしたかどうかについては、薬を切り替えた直後の方が2名、手術後の方が1名、体外受精や人工授精で疲れてステップダウンした方が2名でした。
卵管が詰まっていない限り、タイミングで妊娠をトライし続けることも意味があるんだと思います。ただ、不妊治療はその患者様の妊娠率をあげるために通院をお願いしているので、一定の回数で人工授精をお勧めすることが一般的です。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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