vanishing twin(多胎妊娠確認後、胎児がなくなってしまうこと)の周産期予後(論文紹介)

Vanishing twin(バニッシングツイン)症候群とは、多胎の片方の成長が途中で止まってしまい、ひとりだけ発育し出産することです。以前よりVanishing twin症候群が周産期予後に悪影響に及ぼすかどうかの意見は様々な見解があり、今回比較的大きなメタアナリシスがでましたのでご紹介させていただきます。

Yi-Xin Liら.  J Assist Reprod Genet. 2020 DOI: 10.1007/s10815-020-01928-x

≪論文紹介≫

メタアナリシスの目的は、ART妊娠のVanishing twin症候群の周産期予後の検討です。PubMed、Embase、MEDLINE、ClinicalTrials.govを2019年1月までに検索しました。6 万人以上の ART単胎妊娠を含む 17 の観察研究が含まれています。Vanishing twin症候群が単胎児に及ぼす影響は、妊娠週数14週以前に起こった場合、分娩週数、早産(<37週)、低出生体重児(<2500g)に通常妊娠での単胎児と比較し差はありませんでした。14週後にVanishing twin症候群が発生した場合は、分娩週数が早く、早産(<37週)、低出生体重児(<2500g)となるリスクが高くなりました。同様に胎児心拍が確認できてからVanishing twin症候群は分娩週数が早く、早産(<37週)、低出生体重児(<2500g)となるリスクが高くなりました
このメタアナリシスでは、Vanishing twin症候群が周産期予後に影響するかどうかVanishing twin症候群の発生時期に大きく依存することがわかりました。

オッズ比 95%信頼区間 参考論文数
a.14週未満発生 -0.08 (-0.27, 0.10) 5論文
b.時期限定せず -0.30 (-0.46, 0.10) 5論文
c.心拍確認できない時期の発生 -0.12 (-0.35, 0.10) 2論文
d.心拍確認後の時期の発生 -1.65 (-4.40, 1.10) 2論文
total -0.27 (-0.44, -0.11)

在胎週数との関係

 

  オッズ比 95%信頼区間 参考論文数
a.14週未満発生 1.23 (0.89, 1.70) 3論文
b.時期限定せず 1.43 (1.20, 1.71) 5論文
c.心拍確認できない時期の発生 1.10 (0.80, 1.51) 2論文
d. 心拍確認後の時期の発生 4.15 (2.59, 6.65) 1論文
total 1.48 (1.19, 1.85)  

37週早産との関係

 

  オッズ比 95%信頼区間 参考論文数
a.14週未満発生 1.56 (1.00, 2.43) 4論文
b.時期限定せず 1.52 (1.03, 2.25) 4論文
c.心拍確認できない時期の発生 1.25 (0.86, 1.82) 1論文
d. 心拍確認後の時期の発生 4.45 (2.79, 7.10) 2論文
total 1.78 (1.35, 2.33)  

低出生体重児(<2500g)との関係

 

Vanishing twin症候群の周産期予後に対する有害となりうる機序は以下のことが考えられています。
①亡くなった胎児組織の直接的な影響
亡くなった胎児組織の再吸収は、炎症性サイトカインやプロスタグランジンの放出を増加させ、炎症プロセスを開始させるだけでなく、胎盤血流を変化させます。よって相対的な胎盤不全をもたらし胎児への栄養不全を引きおこす可能性があります。これらの観点から⑴一卵性>二卵性、⑵亡くなった胎児の数⑵母体年齢がリスク因子になってきます。
②Vanishing twin症候群になりやすい環境
体外受精で二個移植するような場合は胚のグレードが低いので二個移植することがあります。このような場合は胚質の観点から周産期予後が低下する可能性が考えられます。また、胎児心拍が確認できてからのVanishing twin症候群は母体側の胎盤形成不全などを引き起こす因子により胎児が亡くなっている可能性が高くなりますから、早い段階での胚の質で引き起こされると思われるVanishing twin症候群より母体因子に依存するので周産期予後が悪くなっている可能性があります。

≪私見≫

2002年に発表された論文では、Vanishing twin症候群の発生率は胎嚢が2つの妊娠では36%、3つでは妊娠では53%、4つ以上では65%に発生するとされています。不妊治療が普及してから一定頻度で多胎率が自然妊娠より増加していますので、臨床現場でも年に何度かは確認することがあります。現在、一般不妊治療での単一卵胞発育を目指した治療、また体外受精治療での単一胚移植が主流になってきており周産期合併症の観点からも避けられうる多胎をゼロに近づけようという流れに世界的になってきておりますが、2020年10月現在、当院でも多胎率が一般不妊治療では1.2%、体外受精では3%であり、一定の割合で遭遇してしまいます。着床前診断が普及することによりvanishing twin症候群の数が減少するはずです。振り返りも含めて今後の検討課題だと考えています。

 

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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