「SpermSlow™による精子選択」と「IVFラボが目指すべき培養成績の指標とその改善方法」(講演のご報告)
最近、講演を2題させて頂きました。この御時世なので、聴衆の方達を前に喋る形式ではなく、いずれもウェブでの講演なのでパソコンに向かって喋る形式でした。ウェブでのミーティングですと、御相手のお顔がモニター越しに見えるので、まだいいのですが、ウェブでの講演となりますと、聴衆の方達のお顔・反応が全く見えないので物凄くやり辛かったです。以下、簡単に報告致します。
①2020年8月7日に「SpermSlow™による精子選択」というテーマで発表させて頂きました。
・SpermSlow™に関しましてはこちらの記事も御参照ください→https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_167.html
こちらの発表は顕微授精で卵子の中に入れる精子をどのように選ぶのかという内容です。過去の記事でも触れましたようにSpermSlow™という製品は成熟した精子を選ぶのに使われます。この製品を使う際のコツ、また、この製品の使用により、過去の体外受精治療において胚発育が良くなかった患者さんの胚発育が改善されること(スライドを御参照ください)を報告させて頂きました。この発表を基に、より良い精子選択方法を確立していければと思います。
②2020年9月6日には「IVFラボが目指すべき培養成績の指標とその改善方法」というテーマで発表させて頂きました。こちらの講演会は自分の他に4名、そのうち1名は海外の先生の発表が同時通訳で拝聴出来るという贅沢な企画でした。290名以上の方が聴講されていたそうです。
体外受精治療で受精卵をお預かりする期間は7日間足らず。したがって、この7日間の間に色々な成績が出ます。例えば、顕微授精をした卵子のうち、何個が生存したのか(=生存率)。体外受精治療施設として、顕微授精の生存率は最低限何%をクリアすべきなのか?何%をクリアしたら十分と言えるのか?世界各国の団体から成績の指標が定められています。今回の発表では、これらの団体の中で最も大きいヨーロッパ生殖医学会が定める19の成績の指標(ウィーン・コンセンサスと呼ばれています)を解説致しました。また、指標をクリア出来なかった場合、どのように改善するとクリア出来るのか?私が実際に過去に経験した改善方法の事例をいくつか報告させて頂きました。写真に示したグラフは顕微授精において、精子を注入する針の動かし方を変更することで生存率が改善した事例を紹介したものです。ちなみに今回、紹介させて頂いたヨーロッパ生殖医学会の19の指標、当クリニックでは「クリアしたら十分」を達成出来ていない指標がまだ何個かあります。今後、常に成績を見直し早急に全指標において「クリアしたら十分」を達成しなければならないと強く感じております。
この度は発表の機会を与えて頂いた関係者の皆様方、並びに、自分の拙い発表を聴講して頂いた方達に深く御礼を申し上げます。
文責:平岡(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。