インフルエンザワクチンの投与について (ガイドライン産科編2020)
本年度はwith coronavirusの年になりました。我々医療者も予防の必要性を身に染みて感じました。毎年、多くの問い合わせをいただいているインフルエンザワクチンの予防接種ですが、本年は更にご要望が多いことを鑑み、当院でも実施することといたしました。
インフルエンザワクチンの供給が開始され次第(10月中旬頃の予定)、開始を検討しています。予約方法・実施方法など現在準備をすすめております。来週早々、ホームページ上で予約受付を開始いたしますのでもう少しお待ちください。
妊娠の可能性がある患者の皆様は、「打っても大丈夫なのかな?」という不安があると思いますので、日本産婦人科診療ガイドライン産科編2020に記載されている「妊婦・褥婦へのインフルエンザワクチンおよび抗インフルエンザウィルス薬の投与について尋ねられたら?」のワクチン接種に関する部分をご紹介させていただこうと思います。
- 妊婦へのインフルエンザワクチン接種はインフルエンザの予防に有効であり、母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じて極めて低いと説明する(推奨度B)
- インフルエンザに感染した妊婦・分娩後2週間以内の褥婦への抗インフルエンザウィルス薬投与は重症化を予防するエビエンスがあると説明する(推奨度B)
また、インフルエンザと妊娠の関係ですが、以下のことが分かっています。
- 妊婦はインフルエンザにかかると重篤な合併症を引き起こしやすい。
- 妊娠中、インフルエンザに罹患すると自然流産、早産、低出生体重児、small for gestational age(在胎期間相当の体格よりかなり小さく生まれる児)、胎児死亡が増加する。
- インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、妊娠全期間をとおして母体・胎児への危険性は低く、インフルエンザ流行時期に妊娠予定の女性への接種を推奨されている。
- インフルエンザワクチンの効果は、接種後2週間から約5ヶ月とされているので、ワクチン接種時期は10-12月中旬が好ましい。
- 以前は、インフルエンザワクチンに含まれている防腐剤のエチル水銀(チメノサール)が胎児への影響が懸念されていたが、濃度もごく少量で関連は否定されており、妊婦への投与は問題なさそう。
- 妊娠初期にインフルエンザに罹患した場合、神経管閉鎖障害や心奇形などの胎児奇形が増えると報告があるが、妊婦が高熱を出すことが原因と考えられていて、アセトアミノフェンなどの解熱剤を用いて適切に治療すれば先天異常リスクは上昇しないことがわかっている。
文責:川井(院長)
本年は新型コロナウイルスの流行をうけ、全国的に成人の方の接種が増加することが予想されています。千葉市ではインフルエンザ予防接種費用の助成対象を拡大することが決定しました。当院での接種をご希望の方はお早めにご予約ください。
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。