絨毛膜下血腫はホルモン補充周期妊娠で発生しやすい?(論文紹介)

不妊治療を行っていると妊娠初期の出血にとてもナーバスになります。そのなかの一つの原因に絨毛膜下血腫があります。
絨毛膜下血腫は妊娠初期に4-48%と頻度高く認められる疾患です。発生機序としては子宮壁からの絨毛膜が部分的に剥離したことが考えられます。絨毛膜下血腫は自然流産、死産、胎盤剥離、前期破水と妊娠高血圧症候群との関連報告もあります。否定的な意見も多いですが、これらが周産期合併症に影響を与えることは十分に考えられますので以前より発生頻度に関してしばしば議論されてきました。
絨毛膜下血腫の発生頻度は①生殖補助技術(ART)妊娠が自然妊娠(人工授精やタイミング法)に比べて高い(Xiang Lら.2014)。②凍結融解胚移植妊娠が新鮮胚移植妊娠に比べて高い(Asato Kら.2014)、とされてきましたが、今回の論文は新たに③ホルモン補充周期凍結融解胚移植が排卵周期凍結胚移植にくらべて絨毛膜下血腫の発生頻度が高い???という報告になります。
Jenna Reichら、Fertil Steril. 2020 DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.04.040

≪論文紹介≫

凍結融解胚移植(正常核型胚)のプロトコールが絨毛膜下血腫の発生率に及ぼす影響しているかどうかを調べたレトロスペクティブコホートです。ニューヨーク大学で2016年から2018年に凍結融解胚移植を受け、条件が合致する1273例の症例を対象としました。絨毛膜下血腫の発生頻度は、排卵周期凍結融解胚移植の方がホルモン補充周期下凍結融解胚移植に比べて低いという結果でした(P<0.05;相対リスク0.4 [0.27-0.78]; オッズ比0.4 [0.23-0.75])。
彼らは血清エストロゲン値が絨毛膜下血腫の発生率に影響するのでは?と仮説をたてていました。排卵周期凍結融解胚移植の方がホルモン補充周期下凍結融解胚移植に比べてプロゲステロン補充開始日および28日目の血清エストロゲン値は高い値でありましたが、絨毛膜下血腫の形成とは関連していませんでした。
この報告は凍結融解胚移植のプロトコールが絨毛膜下血腫の発生率に及ぼす影響しているかどうかを調べた初めての研究です。絨毛膜下血腫の発生機序は原因が解明されていないことが多く、今後、絨毛膜下血腫に関連した研究がもっと進むべきだとされています。

≪私見≫

私たちは妊娠初期によく絨毛膜下血腫と遭遇するので、とても興味深い報告と感じています。この論文でも記載されていますが、私たちも流産率には影響しないと感じていますが、そのあとの周産期予後とは関連することも考えられますので、周産期施設への妊娠時への報告書には必ず記載するようにしています。私たちの施設では患者様の通院の利便性以外にも⑴着床の窓との関連や⑵採卵翌周期の排卵周期の成績が芳しくないことから凍結融解胚移植のプロトコールはホルモン補充周期→排卵周期という順序で行うことが多いです。
この論文を踏まえて「排卵周期凍結融解胚移植を増やすべきか?」というところに関しては、症例ごとに選択していこうと思っています。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。