前置胎盤と低位臍帯付着部位は母体血圧と関連(BJOG 2011)
【はじめに】
異常臍帯付着は異常胎児心拍パターンや帝王切開分娩のリスク増加と関連します。一方、子宮内での胎盤の低い位置での着床と妊娠後期の高血圧には逆相関があることも報告されています。今回、妊娠初期の臍帯付着部位評価し、胎盤・臍帯異常との関連、さらに前置胎盤や低位臍帯付着が妊娠高血圧症候群や母体血圧に及ぼす影響について調査した昭和大学からの一連の研究をご紹介いたします。
【ポイント】
前置胎盤や妊娠初期低位臍帯付着は妊娠高血圧症候群頻度および満期母体血圧と関連していそうです。
【引用文献】
J Hasegawa, et al. BJOG. 2011 Nov;118(12):1464-9. doi: 10.1111/j.1471-0528.2011.03051.x.
【論文内容】
胎盤異常と臍帯付着部位が妊娠高血圧症候群と母体血圧に影響を与えるかどうかを評価することを目的とした症例対照研究です。2006年10月から2010年9月まで単胎児を分娩した5722名女性を対象としました。胎盤異常、胎盤位置、臍帯付着部位の位置、母体背景と妊娠高血圧症候群の発症および妊娠満期における母体血圧との関連を分析しました。主要評価項目は妊娠高血圧症候群と妊娠満期における母体血圧でした。
結果:
妊娠高血圧症候群は236名(4.1%)に観察されました。妊娠高血圧症候群は胎盤形態異常(OR: 3.0)および胎盤梗塞(OR: 5.3)を有する女性に観察されました。妊娠高血圧症候群は前置胎盤のある女性では0%、ない女性では4.1%に観察され(P = 0.004)、妊娠初期の低位臍帯付着のある女性では0%、ない女性では2.5%に観察されました(P = 0.018)。交絡因子を調整した多変量回帰分析では、前置胎盤のない女性と比較して前置胎盤のある女性では収縮期血圧および拡張期血圧がそれぞれ8.4mmHgおよび5.0mmHg低下し、低位臍帯付着のない女性と比較して妊娠初期の低位臍帯付着のある女性では収縮期血圧および拡張期血圧がそれぞれ4.3mmHgおよび3.1mmHg低下することが明らかになりました。
【私見】
この論文には、同大学からの先行論文があります。
J Hasegawa, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2006 Aug;28(2):183-6. doi: 10.1002/uog.2839.
妊娠9-11週の超音波検査により臍帯付着部位を評価した前向きコホート研究です。340名の妊婦を対象とし、子宮を上中下の3等分に分け、下部1/3への臍帯付着を低位と定義しました。臍帯付着部位は93.5%で同定可能であり、低位臍帯付着は35例(11.0%)に認められ、これらの症例では分娩時に低置胎盤(23% vs 0%)、卵膜付着・辺縁付着(29% vs 1.4%)、胎盤異常(14% vs 1.4%)、緊急帝王切開(11% vs 2.1%)が正常群と比較して高頻度でした。興味深いことに、妊娠初期に低位と診断された74%は出生時には正常位置になったという内容です。
生殖補助医療で妊娠した患者様は妊娠高血圧症候群・胎盤位置異常ともに多いとされています。胚移植からの追跡することで10年以上前の報告ですが胚移植手技を再考するきっかけになったのでとりあげさせていただきました。
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文責:川井清考(院長)
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