精子の頭の幅について

前回は精子の頭の長さについて説明しました。今回は顕微授精で卵子の中に入れる精子を選ぶ基準にしている精子の頭の幅について説明します。

一般的に良い精子の頭の幅には範囲があって広すぎてもダメ、狭すぎてもダメ、と言われています。こちらの顕微鏡写真をご覧ください。

上の精子の頭は広すぎ(異常である可能性が高いです)、真ん中が適切(精子の質が最も良いと考えられます)、下は狭すぎ(異常である可能性が高いです)です。頭の幅の違う精子を一緒に並べると、違いが分かりやすいのですが、個々になると頭の幅の違い(特に幅が広すぎる精子)は分かりづらくなります。

そこで、我々は精子を卵子の中に入れるときに使うガラスの針を定規替りに使って精子の頭の幅を判断しています。ガラスの針の内径は約5μメートルです。

頭の幅が広すぎる精子をガラス針に吸おうとするとこうなります。

精子の頭の幅が広すぎてガラスの針に引っ掛かって中に吸うことができません。頭の幅が5μメートルよりも大きいことが分かります。

次に頭の幅が適切な精子をガラスの針の中に吸うとこうなります。

精子の頭はすっぽりとガラスの針の中に収まります。頭の幅は約3μメートルであることが分かります。

最後に頭の幅が狭い精子をガラスの針の中に吸うとこうなります。

精子の頭が細過ぎてガラス針の中がスカスカで隙間だらけです。頭の幅は約1μメートルであることが分かります。

顕微授精で精子を選ぶ時は、ガラスの針を定規代わりにして精子の質が最も良いと考えられる頭の幅が3μmに近い精子を選ぶように心掛けています。

2回に分けて顕微授精で精子を選ぶ時、ガラスの針を定規代わりにして精子の頭の長さと幅を参考にしていることを説明致しました。現在はより良い精子を選ぶために人工知能を組み込んだ顕微鏡の開発が進んでいます。良い精子を簡単に選別できる時代がすぐそこまで来ています。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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亀田IVFクリニック幕張