Normal responderにおけるトリガー法の比較(Fertil Steril. 2025)
【はじめに】
通常LHサージは卵胞顆粒膜細胞と卵子内で一連の反応を促し、卵子の減数分裂の再開とMII期への進行を誘導します。体外受精では代替物質としてhCG投与が行われてきました。GnRHアゴニストトリガー、デュアルトリガーなどの、ダブルトリガーなどの選択肢が検討されています。
【ポイント】
Normal responderにおいては、hCG単独トリガーに比べてGnRHアゴニストトリガー、デュアルトリガー、ダブルトリガーを使用することが臨床妊娠率向上に優れているという証拠はありません。
【引用文献】
Beebeejaun Y, et al. Fertil Steril. 2025;123:812–26. Doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.11.011
【論文内容】
hCG、GnRHアゴニスト、デュアルトリガー、およびダブルトリガーの有効性と安全性を比較することを目的として行なったRCTのシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスです。2023年12月までにPubMed、MEDLINE、EMBASE、臨床試験登録、およびコクランデータベースに索引付けされたランダム化比較試験を対象としました。hCGトリガーとGnRHアゴニストトリガー、デュアルトリガー、およびダブルトリガーを比較した12RCT(合計1,931人の女性)が含まれ、STATA バージョン16を用いて統計解析が行われました。評価項目は、臨床的妊娠率、生児出生率、採卵数、成熟卵子数、流産率、OHSS発生率としました。
結果:
臨床的妊娠率のネットワークメタ解析では、hCG vs. GnRHアゴニストトリガーのリスク比(RR) 1.13(95%CI、0.80~1.60)、hCG vs. デュアルトリガーではRR 1.23(95%CI、0.92~1.65)、hCG vs. ダブルトリガーではRR 0.38(95%CI、0.21~0.69)、GnRHアゴニスト vs. デュアルトリガーではRR 1.09(95%CI、0.70~1.70)、GnRHアゴニスト vs. ダブルトリガーではRR 0.34(95%CI、0.17~0.67)、ダブルトリガー vs. デュアルトリガーではRR 0.31(95%CI、0.16~0.60)でした。デュアルトリガーはSUCRAが最も高く(85.1%)、臨床的妊娠率に対する優れた有効性を示しました。生児出生率では、デュアル vs. hCGトリガーのRRは1.31(95%CI、1.00~1.70)、デュアルトリガー vs. GnRHアゴニストトリガーのRR 1.60(95%CI、1.05~2.43)でした。OHSS発生率では、hCGトリガーと比較してGnRHアゴニストで有意に低くなりました(RR 0.56;95%CI、0.19~1.75)。デュアルトリガーまたはダブルトリガーの使用によるOHSS発生率を報告したRCTはありませんでした。採卵数、成熟卵子数、流産率については、トリガープロトコル間で有意な差は観察されませんでした。
【私見】
今回の研究は基本新鮮胚移植の成績です。
ESHRE 卵巣刺激2025では新鮮胚移植はGnRHアゴニストトリガーに関してはネガティブな記載となっているため注意が必要です。
投与量は以下のとおりです。
hCGトリガー単独:標準的には5,000〜10,000IU もしくは rhCG
GnRHアゴニストトリガー:
ブセレリン:0.5mg(Andersen et al.、Humaidan et al.の研究など)
トリプトレリン:0.2mg(Kolibianakis et al.、Zhou et al.の研究)
ロイプロリン:0.5mg(Gonen et al.の研究)
デュアルトリガー:
GnRHアゴニスト(上記と同様の量)と低用量hCG(2,000〜5,000IU)を同時投与
ダブルトリガー:
Humaidan et al. 2006では、ブセレリン0.5mgを投与し、その12時間後にhCG 1,500IUを追加投与
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文責:川井清考(院長)
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