プロバイオティクスによる流産率低下と妊娠成績への影響(Sci Rep. 2023)
【はじめに】
不妊治療を受ける女性において、子宮内ラクトバチルス菌優位な環境は、より高い妊娠率と関連していることが報告されるようになってきました。ラクトバチルス菌は過酸化水素や乳酸を産生し、腟内pHを4.5以下に維持することで病原菌の増殖を抑制し、着床に有利な環境を作り出す可能性があります。しかし、プロバイオティクス補充が凍結融解胚移植における妊娠成績にどう影響するかについては、まだ十分な結論はでていません。
凍結融解胚移植前の腟内プロバイオティクス補充の効果に関するランダム化比較試験をご紹介します。
【ポイント】
凍結融解胚移植前の腟内ラクトバチルス補充は生化学的・臨床的妊娠率を改善しませんが、流産率を有意に低減させます。
【引用文献】
Isarin Thanaboonyawat, et al. Sci Rep. 2023 Jul 23;13(1):11892. doi: 10.1038/s41598-023-39078-6.
【論文内容】
凍結融解胚移植前のLactobacillus補充有無による臨床成績を比較するランダム化比較試験として、2019年8月7日から2021年5月まで大学病院附属の生殖医療施設で実施されました。
340名不妊女性が無作為化され、生化学的および臨床的妊娠率は両群で同等でした(介入群では39.9%と34.2%、コントロール群では41.8%と31.7%)。しかし、流産率は介入群で有意に減少しました(9.5% vs. 19.1%、p = 0.02、OR 0.44、95%CI [0.23, 0.86])。
細菌性腟症と診断された49名女性のうち、介入群の生児出産率はコントロール群よりも高かったものの、統計的有意差はありませんでした(42.31% vs. 26.09%、p = 0.23、OR 2.08、95%CI [0.62, 6.99])。胚盤胞移植206名では、介入群の生児出生率がコントロール
群よりも有意に高くなりました(35.71% vs. 22.22%、p = 0.03、OR 1.9、95%CI [1.05, 3.59])。
【私見】
これらの結果は、ラクトバチルスが着床後の妊娠維持により重要な役割を果たす可能性を示しています。
Gilboaらの先行研究では、新鮮胚移植周期において3日間のプロバイオティクス使用では妊娠率に有意差が生じませんでした(Gilboa, Y. et al. Reprod. Biomed. Online 2005)。
今回の研究が奏功したのは、凍結融解胚移植だったのか、プロバイオティクス使用が3日ではなく6日からだったのか、胚盤胞移植が多かったからなのか ここは興味深いどころです。
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文責:川井清考(院長)
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