帝王切開後経腟分娩成功予測の新しいカリキュレーター(Am J Obstet Gynecol. 2025)

【はじめに】

帝王切開後経腟分娩の成功予測では、従来のカリキュレーターに人種・民族が変数として含まれていました。このような問題に対応し、2022年5月に米国国立小児保健・発達研究所(NICHD)は人種・民族を変数から除外した改訂版カリキュレーターをリリースしました(William A Grobman, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021 Dec;225(6):664.e1-664.e7. doi: 10.1016/j.ajog.2021.05.021.)。新しい改訂版カリキュレーターの外部検証結果についてご紹介します。

【ポイント】

人種・民族を除外した改訂版帝王切開後経腟分娩成功予測カリキュレーターは、元のカリキュレーターと同等の判別能力を維持しながら、アフリカ系やヒスパニック系患者の成功予測率を適切に向上させました。

【引用文献】

Nandini R Nittur, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025 Mar;232(3):323.e1-323.e6. doi: 10.1016/j.ajog.2024.06.013.

【論文内容】

人種・民族を変数から除外した改訂版帝王切開後経腟分娩成功予測カリキュレーターの妥当性を検証することを目的としています。
研究方法として、2018年から2020年に3次医療機関で帝王切開後経腟分娩トライアルを受けた全患者を調査し、元カリキュレーターと改訂版カリキュレーターの両方を用いて各患者のV帝王切開後経腟分娩成功確率を計算し、実際の分娩結果と比較しました。各モデルのROC曲線下面積(AUC)を計算して評価しました。
結果:
包含基準に合致した225名のコホートのうち、37%(n=83)がアフリカ系アメリカ人またはヒスパニック系と自己認識しており、全体の帝王切開後経腟分娩成功率は75%、アフリカ系アメリカ人および/またはヒスパニック系患者では76%でした。元のカリキュレーターのAUCは0.71で、新しいカリキュレーターでは0.74でした。アフリカ系アメリカ人および/またはヒスパニック系患者では、モデル間の平均予測成功率が60%から69%に上昇しました。

【私見】

元のカリキュレーターを用いてスウェーデンやカナダなど米国外でのコホート研究では、人種・民族を除外または異なる方法で解釈した場合でも、カリキュレーターの判別能力は維持されることが示されています。このこと、倫理性を加味して改訂版カリキュレーターが作成され同等の判別能力を示しました。改訂版カリキュレーターでは、年齢、身長、妊娠前体重(元ではBMI)、
過去の経腟分娩の有無、前回の帝王切開の理由が分娩停止であったか、慢性高血圧の既往(追加された項目)が項目となっています。
改訂版カリキュレーターでは最適なカットオフ値が52.85%と低くなり、より多くの女性に帝王切開後経腟分娩の機会が提供される可能性があります。元のモデルでは61.83%という高いカットオフ値でした。感度も69%から82%に向上しており、成功の可能性がある症例をより正確に特定できるようになりました。

#VBAC /TOLAC
#帝王切開後経腟分娩
#カリキュレーター
#予測モデル
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張