低卵巣予備能の卵巣刺激改善アドオン治療(Fertil Steril. 2025)
【はじめに】
卵巣予備能低下は、どのようにしたら妊娠成績が改善するのでしょうか。
基本「量より質」という考えが主流で、一回あたりの採卵での回収卵子数を増やすより採卵を繰り返し行うことが一般的となっています。ただ、少しでも一回採卵あたりの回収卵子数を増やしたいですよね。こちらにおける介入のシステマティックレビュー、メタアナリシスをご紹介いたします。
【ポイント】
特にテストステロン補充療法は卵巣予備能低下女性において生児出生率の向上と相関する可能性があり、これらの知見は更なるランダム化試験で検証されるべきです。
【引用文献】
Alessandro Conforti , et al. Fertil Steril. 2025 Mar;123(3):457-476. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.09.038.
【論文内容】
低卵巣予備能(DOR)である女性の臨床管理は生殖補助医療の分野における課題です。POSEIDON基準に従ってDORと診断された女性のみを対象とした補助的治療と治療プロトコルを調査することとしたシステマティックレビュー、メタアナリシスです。2024年6月までにMEDLINE(PubMed)、EMBASE、ISI Web of Knowledgeデータベースに発表された報告を検索しました。
4,806論文のタイトルと要約を精査し、124論文の適格性を評価し38件のランダム化比較試験を検討しました。評価された介入は、DHEA(n=1,336)、テストステロン(n=418)、高用量vs低用量ゴナドトロピン(n=957)、GnRHアンタゴニストによる遅延開始プロトコル(n=398)、レトロゾール(n=612)、クロミフェンクエン酸塩(1,113)、成長ホルモン(311)、黄体期刺激(n=57)、二重トリガー(n=139)、二重刺激(168)、黄体形成ホルモン(979)、エストラジオール前処理(n=552)、コリフォリトロピンアルファ(n=561)でした。
主要評価項目は生児出生率または生児出生データが入手できない場合の継続妊娠率でした。副次評価項目は採卵数、MII卵子数、臨床妊娠率、流産率でした。
結果:
テストステロン補充療法は評価されたすべての介入の中で、非補充女性と比較して生児出生率が高いことに関連していました(OR:2.19、95%CI:1.11-4.32、4研究、368患者)。テストステロン(WMD 0.88、95% CI:0.03-1.72;4研究、n=368患者)、DHEA(WMD 0.60、95% CI:0.07-1.13;4研究、n=418患者)、および遅延開始プロトコル(WMD 1.32、95% CI:0.74-1.89;3研究、n=398患者)は採卵総数を改善しました。低用量ゴナドトロピン療法を受けた女性では高用量と比較して採卵数が少なくなりました(WMD:1.57、95% CI:2.12-1.17;2研究、n=905患者)。他の介入では有意な改善は見られませんでした。
【私見】
DHEAや高用量ゴナドトロピン療法、遅延開始プロトコルは採卵数を改善するものの、臨床的妊娠率や生児出生率には影響しないという結果は、「量より質」を説明するものなのかどうかは重要なポイントかなと考えています。
テストステロン補充は、多毛、ざ瘡、男性型円形脱毛以外にもさまざまな合併症がありますので、使用する際には十分な説明を受けて開始すべきかと考えています。
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文責:川井清考(院長)
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