年齢によって異なるPGT-A有用性(Fertil Steril. 2025)
【はじめに】
PGT-Aは万能のように思えて、①生検による胚のダメージ、②判定不能となるリスク(1.2-5.7%)などがあり、PGTをしたほうが結果として妊娠・出産率が上がるわけではないことが以前より指摘されています。今回、米国のARTレジストリを用いた報告をご紹介いたします。
【ポイント】
PGT-Aの有用性は年齢に依存し、35歳未満では累積生児出生率がやや低下し、38~40歳では累積生児出生率が高くなります。
【引用文献】
Benjamin S Harris, et al. Fertil Steril. 2025 Mar;123(3):428-438. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.09.043.
【論文内容】
21~40歳の予後良好と考えられる患者において、NGSを用いたPGT-Aと形態学的評価のみによる単一胚盤胞移植後の累積生児出生率を比較評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2016年から2019年にかけて、SART登録施設にて初回自己卵子を用いた採卵周期を実施し、5個以上の受精卵を得て、単一胚盤胞移植を行った21~40歳の患者を対象としました。主要評価項目は採卵あたりの累積生児出生率(1回の採卵周期から得られた胚を用いて、最大3回までの単一胚盤胞移植を行った後に少なくとも1回の生児出産を達成できた割合を指しています。)、副次評価項目には臨床的妊娠率、流産率、移植あたりの生児出生率が含まれました。
結果:
合計56,469周期が分析に含まれました。採卵周期は年齢(<35歳、35-37歳、38-40歳)とPGT-Aの使用有無により層別化されました。修正ポアソン回帰モデルを用いて共変量を調整しながら、PGT-Aと累積生児出生率の関連を評価しました。このコホートでは、ほとんどの周期(49,608周期; 88%)でPGT-Aは使用されていませんでした。
共変量調整後、PGT-Aの使用は35歳未満患者では累積生児出生率がわずかに低下(RR: 0.96; 95% CI: 0.93-0.99)していましたが、35-37歳(RR: 1.04; 95% CI: 1.00-1.08)および38-40歳(RR: 1.14; 95% CI: 1.07-1.20)では累積生児出生率が高くなりました。全胚凍結周期のみに限定したサブグループ分析(n=29,041)では、PGT-Aは35歳以上で累積生児出生率が高く、35歳未満ではPGT-Aなしと同等でした。35歳以上ではPGT-A使用時の流産率が有意に低くなりました。
【私見】
35歳以下のPGT-Aの実施に関しては同様見解が多いですね。
- Kucherov et al.の研究:
- Kucherov A, et al. J Assist Reprod Genet. 2022;40:137–49.
40歳以上の女性を除くすべての年齢群でPGT-Aを使用した場合に累積生児出生率が減少 - Mejia et al.の研究:
- Mejia RB, et al. F S Rep. 2022;3:184–91.
35歳未満の患者においてPGT-Aを行うと累積生児出生率が減少
35~37歳の患者では累積生児出生率に差なし - STAR試験:
- Munne S, et al. Fertil Steril. 2019;112:1071–9.e7.
35歳未満の女性ではPGT-Aによる生児出生率の減少
35~40歳の女性では移植あたりの生児出生率は改善 - Yan J, et al. の研究:
- Yan J, et al. N Engl J Med. 2021;385:2047–58.
20~37歳の良好予後患者(3個以上の胚盤胞を持つ)1,212人を対象とした研究
PGT-A群の累積生児出生率は77.2%、従来のIVF群では81.8%(P<.001)
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文責:川井清考(院長)
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