DOR女性の自然周期採卵における適正卵胞サイズ(J Ovarian Res. 2023)

【はじめに】

自然周期採卵を実施する患者さまは、卵巣予備能が低下している方が大半です。DOR女性では高いFSH、LH曝露下にありますから、通常の卵巣予備能、若年女性の採卵タイミングと異なる認識をもたなくてはいけないかもしれません。38歳前後、AMH 0.2ng/mL前後の女性に対する自然周期採卵における卵胞サイズ別の生殖予後をご紹介します。

【ポイント】

卵巣予備能低下女性の自然周期採卵では、早期LHサージが生じて小さな卵胞(12-15mm)で採取した場合でも、通常サイズの卵胞と同等の生殖予後が期待できます。

【引用文献】

Tian Tian, et al. J Ovarian Res. 2023 Sep 20;16(1):195. doi: 10.1186/s13048-023-01281-4.

【論文内容】

卵巣予備能低下(DOR)女性における自然周期採卵の卵胞サイズとの関連性を調査することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。中国生殖医療センターにおいて、2015年から2021年に477件の自然周期採卵を対象としました。卵胞の発育モニタリングは月経周期8日目から超音波検査によって開始されました。その後の定期的な診察では、超音波とともに血清エストラジオール(E2)、プロゲステロン(P)、黄体形成ホルモン(LH)レベルを定期的に測定しました。モニタリングされた卵胞サイズと血清LH、E2、Pのレベルに基づいて、hCG注射のタイミングが決定されました。LHサージを示した患者もトリガー注射を受けました。主席卵胞が直径16-18mmに達した時点でhCGトリガーが投与され、その36-38時間後に採卵が行われました。premature LHサージが起こってしまったり、小さな卵胞での排卵既往がある女性に関しては場合には、12-15mmの卵胞サイズでトリガーを実施しました。卵胞サイズは3つのグループに分類されました:グループA:平均直径12-15mm、グループB:平均直径16-17mm、グループC:平均直径18mm以上
超音波検査中に卵胞が観察されなかった場合、採卵をキャンセルとしました。
結果:
12-15mm:68周期、16-17mm:171周期、18mm以上:236周期を対象としました。女性年齢、男性年齢、不妊期間、不妊タイプ、出産歴などの基本特性はグループ間で同等でした。12-15mmグループの周期キャンセル率(27.9%)は他グループよりも高値でした。16-17mmの卵胞径グループの2PN受精率(75.0%)は、12-15mmの卵胞径グループ(61.3%)と18mm以上の卵胞径グループ(56.6%)より高値でした(P=0.031)。採卵数、良好胚数、新鮮胚移植数、凍結胚数、臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率に関して3グループ間に有意差はありませんでした。

【私見】

DOR患者においては、やはり卵胞サイズにこだわりすぎない方がよいかもしれません。
患者さま別の個別化トリガー卵胞サイズが必要なんだと感じています。

トリガー日の卵胞サイズ別生殖予後を記載いたします。
12-15mm グループ:
   全68周期中20周期がキャンセル(27.9%、20/68)
   残りの48周期で採卵実施
   そのうち33周期で卵子が回収(64.7%、33/48)
   そのうち21周期で受精確認(2PN形成)(63.6%、21/33)
   そのうち13周期で胚が得られた(39.4%、13/33)
16-17mm グループ:
   全171周期中21周期がキャンセル(12.3%、21/171)
   残りの150周期で採卵実施
   そのうち106周期で卵子が回収(70.7%、106/150)
   そのうち80周期で受精確認(2PN形成)(75.5%、80/106)
   そのうち42周期で胚が得られた(39.6%、42/106)
≥18mm グループ:
   全236周期中30周期がキャンセル(12.7%、30/236)
   残りの206周期で採卵実施
   そのうち130周期で卵子が回収(63.1%、130/206)
   そのうち78周期で受精確認(2PN形成)(60.0%、78/130)
   そのうち55周期で胚が得られた(42.3%、55/130)

採卵決定時からの胚到達率
   12-15mmグループ: 19.1%(13/68)
   16-17mmグループ: 24.6%(42/171)
   ≥18mmグループ: 23.3%(55/236)
卵子回収時からの胚到達率
   12-15mmグループ: 39.4%(13/33)
   16-17mmグループ: 39.6%(42/106)
   ≥18mmグループ: 42.3%(55/130)

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文責:川井清考(院長)

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