自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

【はじめに】

採卵を決める卵胞サイズ、エストラジオールは本当に難しいです。行なっている卵巣刺激、トリガー種類、そして年齢によっても変わってきます。また、卵胞サイズはトリガー日なのか、採卵日なのかによっても異なってきます。
自然周期採卵における、排卵トリガーの最適なタイミングを決定する際に参考となる卵胞サイズとエストラジオール濃度を調査した報告をご紹介いたします。35歳前後、AMH 2.4ng/mL前後のnormal responder女性を対象としています。

【ポイント】

自然周期IVFにおける卵胞サイズと卵子回収時期、成熟卵率、生産率の解析から、採卵時卵胞サイズが18-22mmの症例で生産率が高くなる傾向が示されました。

【引用文献】

Anja Helmer, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 May 26:13:855131. doi: 10.3389/fendo.2022.855131.

【論文内容】

自然月経周期に基づく不妊治療において、卵胞サイズと血清エストラジオール(E2)濃度に関する詳細な情報を提供し、排卵トリガーの最適なタイミングのスケジューリングを改善することを目的としたレトロスペクティブ横断研究です。
2016年から2019年に606件の単一卵胞自然周期採卵を対象とし、採卵日5日前から当日(day 0 = 採卵日)までの卵胞サイズと血清E2およびLH濃度を評価しました。卵胞サイズが14〜22mmの場合にトリガーを実施しました。排卵障害、重度子宮内膜症などの症例は除外しています。
排卵トリガーとして5000 IUを投与し、36時間後に採卵を行っています。最終受診からhCG投与までの平均日数は2.4日(SD 0.6)と報告しています。LH抑制や卵巣刺激は行っていません。採卵はフラッシングを5回行い、麻酔なしで19-G針を用いて実施され、採卵から2-3日後に新鮮胚移植を行っています。
結果:
女性平均年齢は35.8±4.0歳でした。卵胞サイズは1日あたり1.04±0.03mm、E2濃度は1日あたり167±11.0pmol/lずつ増加しました。卵胞サイズ、E2およびそれらの相互作用を含む多変量調整混合モデルに基づくと、卵子回収率はE2濃度と関連していました(aOR 1.91、95% CI:1.03-3.56; p = 0.040)。卵子成熟率はE2濃度(aOR 2.01、95% CI:1.17-3.45; p = 0.011)だけでなく、卵胞サイズ(aOR 1.27、95% CI:1.01-1.60; p = 0.039)とも関連しており、両パラメータの相互作用(aOR 0.96、95% CI:0.93-0.99; p = 0.017)も関連していました。LHサージは、25%の症例でE2レベル637pmol/l、50%の症例で911pmol/l、75%の症例でE2レベル1,480pmol/lで開始すると計算されました。採卵あたりの出生率は、採卵時の卵胞サイズが18-22mm(7.7%-12.5%)が、卵胞サイズが14-17mm(1.6%-4.3%)のサイクルよりも(有意差はないものの)高くなりました。

【私見】

平均的な卵胞成長速度について、1990年代の報告では1.7mm/日と報告されていましたが、本研究では1.04±0.03mm/日と報告しています。採卵を決定する前後の大きさになると自然周期発育の場合1.0-1.7mm/日前後と考えておけば無難でしょう。

採卵当日の卵胞サイズ別の成績
14-15mm
   卵子回収率:75.4%(63.3-84.5%)
   MII卵率:84.8%(71.8-92.4%)
   胚発生率:69.2%(53.6-81.4%)
   出生率:1.6%(0.3-8.7%)
16mm
   卵子回収率:91.5%(80.1-96.6%)
   MII卵率:90.7%(78.4-96.3%)
   胚発生率:76.9%(61.7-87.4%)
   出生率:4.3%(1.2-14.2%)
17mm
   卵子回収率:87.2%(78.5-92.7%)
   MII卵率:86.7%(77.2-92.6%)
   胚発生率:80.0%(68.7-87.9%)
   出生率:3.5%(1.2-9.8%)
18mm
   卵子回収率:83.3%(73.1-90.2%)
   MII卵率:95.0%(86.3-98.3%)
   胚発生率:77.2%(64.8-86.2%)
   出生率:12.5%(6.7-22.1%)
19mm
   卵子回収率:87.1%(77.3-93.1%)
   MII卵率:95.1%(86.5-98.3%)
   胚発生率:84.5%(73.1-91.6%)
   出生率:10.0%(4.9-19.2%)
20mm
   卵子回収率:84.5%(74.3-91.1%)
   MII卵率:86.7%(75.8-93.1%)
   胚発生率:78.8%(66.0-87.8%)
   出生率:8.5%(3.9-17.2%)
21-22mm
   卵子回収率:74.4%(58.9-85.4%)
   MII卵率:89.7%(73.6-96.4%)
   胚発生率:76.9%(57.9-89.0%)
   出生率:7.7%(2.7-20.3%)

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文責:川井清考(院長)

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