体外受精患者の季節による妊娠高血圧症候群/妊娠糖尿病リスク(J Assist Reprod Genet. 2025)
【はじめに】
ヒトの出生や周産期合併症は季節変動があることが知られています。これらは気温や湿度、日照時間、ビタミンDレベルなどの季節的要因に関連している可能性があります。生殖補助医療で妊娠に至った女性は妊娠高血圧症候群/妊娠糖尿病リスクが自然妊娠女性に比べて高いことが知られています。生殖補助医療患者の季節による妊娠高血圧症/妊娠糖尿病リスクを調査した報告をご紹介いたします。
【ポイント】
春に胚移植を受けた女性は、冬に胚移植を受けた女性に比べて妊娠高血圧症候群リスクが高く、この傾向は凍結融解胚移植で顕著です。
【引用文献】
Yue Niu, et al. J Assist Reprod Genet. 2025 Feb 18. doi: 10.1007/s10815-025-03426-4.
【論文内容】
生殖補助医療患者の季節による妊娠高血圧症候群/妊娠糖尿病リスクを調査することを目的としました。中国生殖医療センターで2016年1月から2021年6月に初回体外受精周期で単胎分娩に至った21,469名の女性を対象としたレトロスペクティブ研究です。胚移植時期と採卵時期に基づいて異なる季節グループで妊娠高血圧症候群/妊娠糖尿病リスクを比較しました。
結果:
多変量ロジスティック回帰分析による調整後、春に胚移植を受け出産予定日が冬となる女性は、冬に胚移植を受け出産予定日が秋となる女性に比べて妊娠高血圧症候群リスクが高くなりました(4.9% vs. 3.8%;aOR 1.34;95%CI 1.09–1.64;P=0.005)。採卵時期による妊娠高血圧症候群リスクの季節的変動や、胚移植時期・採卵時期に関わらず妊娠糖尿病リスクの季節的変動は認められませんでした。サブグループ解析では、妊娠高血圧症候群リスクの季節的変動は凍結融解胚移植では明らかでしたが、新鮮胚移植では認められませんでした。
【私見】
筆者らは初期妊娠期の高温曝露と妊娠後期の低温曝露が妊娠高血圧症候群リスクを高めるとしているんです。北欧でも日本でも春から夏にかけての妊娠が、妊娠高血圧症候群リスクが高いことは変わりないので、緯度や食生活は関係ないのかなと。(TePoel MR, et al. J Reprod Immunol. 2011、Rohr Thomsen C, et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2020、Jeppegaard M, et al. Arch Gynecol Obstet. 2023、Morikawa M, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2014)
凍結融解胚移植で有意差がついたのでは発症率が高いから有意差がつきやすいのかなと思っていますが、他にもヒントが隠れているのかもしれません。今後も注視していきたいと思います。
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文責:川井清考(院長)
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