原因不明不育症患者に対する着床前遺伝子検査(PGT-A)の有用性(Fertil Steril. 2025)
【はじめに】
流産は妊娠の15-25%に経験する一般的な合併症です。不育症は、国や学会によって軽度異なりますが、2回以上の連続または非連続の妊娠喪失(生化学的妊娠や着床部位不明妊娠を含む)と定義されています。不育症原因は様々ですが、50%以上が原因不明とされています。PGT-Aによる異数性胚の選別が、不育症患者の治療選択肢として注目されています。
【ポイント】
PGT-A(着床前検査)ASRM committee opinion 2024とほぼ同様の見解となっています。
原因不明不育症患者で異数性割合が増えるかどうかは、今回は不明確で結論がでませんでしたが、今後のデータに注目していきたいと思います。
【引用文献】
Mumusoglu S, et al. Fertil Steril. 2025. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.08.326
【論文内容】
原因不明不育症の管理におけるPGT-Aの有効性を、検討することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。
PubMedとCochrane Libraryのデータベースを、開始時から2024年6月まで検索しました。PGT-Aの有無に関わらずARTを実施して2回以上の原因不明不育症患者を含む研究を対象としました。主要評価項目は生児出生率とし、副次評価項目は異数性率、臨床的妊娠率、流産率としました。原因不明不育症とは、染色体異常、子宮形態異常、内分泌異常(甲状腺機能、糖尿病、PCOS)、免疫学的異常(抗リン脂質抗体症候群を含めて)がない症例としました。
結果:
18報告が選択されました。PGT-A実施群と非不育症群の比較:8研究、PGT-A実施群とPGT-A非実施群の比較:11研究です(1研究が両方のデータを含む)。研究デザインは後ろ向き研究が主で、1つが前向き研究、1つがRCTでした。
不育症カップルの胚異数性率が高いかどうかは不明確でした。正常核型胚移植では、原因不明不育症患者と非原因不明不育症患者で流産率(OR 1.10; 95% CI 0.57-2.13)および出生率(OR 1.04; 95% CI 0.74-1.44)が同等でした。流産組織のPOC分析では、原因不明不育症患者と非原因不明不育症患者で異数性率が同様でした。PGT-Aは流産率を低下させ(OR 0.42; 95% CI 0.27-0.67)、移植あたり(OR 2.17; 95% CI 1.77-2.65)および患者あたり(OR 1.85; 95% CI 1.18-2.91)の生産率を向上させました。
【私見】
生殖医療者が日常診療で悩む「どの患者さんにPGT-Aを提案すべきか」という問いに対して、以下の患者群が良い適応となるのでしょうか。
高齢患者で複数胚が獲得できるヒトは確かに良い適応だと思います。次に原因不明不育症患者も正常胚を戻さないと、その後のディスカッションが進まない気がするので提案するようにしています。
今回の結果は当たり前と言われると、そのとおりなのですが、PGT-A(着床前検査)ASRM committee opinion 2024と一致した見解となっています。
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文責:川井清考(院長)
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